RECORD
Eno.8 スフェーンの記録
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顔を覆って顔を隠して、頭を抱えるようにして座っている自室の中。
窓を開けてあるから緩く部屋の中を揺らしていく。初夏の熱を含んだ風は緩くて生暖かな湿気を含んでいて、ちょっとべとついている。
空の方は見ないようにしているから、今は星の声はシャットダウンだ。
みなければ声は聞こえないから。
考えている。考えている。
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これで本当に良かったのかを考えている。
全部投げ捨てている。
全部放り投げている。
責任。願い。受けたもの。
裸足で逃げ出して後ろを振り返らずに走り出したようなものだろう。
自分だけ甘い優しい方向に向かっている。
手触りの良くて明るい方へ。
板挟みになっていたのの、片方の板を割って、閉塞感から逃げ出すように。
板挟みでは動けないから、いつかは選ばなければいけなかったのだとしても。
この選択は本当に正解か?
正しい方を選ばなければいけない。
もらったことは成し遂げなければいけない。
自分のことは割とどうでもよくて、他を考えなければいけなくて。
誰かの声が責め立てるように聴こえている。
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これは言い訳だよ。言い訳。
板挟みから解放されて振り返ってみて、三者として自分を見た時の話。
正直自分の事情なんて自分をひたすら絡めて動けなくなるものでしかない。
やらなくてはいけないことは、やらなくてもいいことだから。
やったところで成功確率なんて大したものじゃないことはわかりきっていること。
切られたチケットの端は焼けこげている。
自分だけ生き残ってしまった罪悪が自分の心を焦がしている。
生きてる人の責任。本来は殺されるべき人間の。
ただそこに罪はないと言いたい。
罪はないと言いたい。
静かに一人になると聞こえている、なんてことは自分でもわかっている。
もういないものから声はしない。
停止したものから、声はしなくて。
生きてた頃の過去の方から無理やり音を引っ張り出しているだけだった。
生成をしている。自分を虐めるだけの行為の音にしている。
最悪だ。最低。クソッタレ。冒涜行為。
そうしてないと吐きそうだ。いつまでも視界が回転し続けている。
人と喋ってる時は“スフェーン”でいればいい。
話してない時はこうなっている。
臆病で情けない、くだらない、つまらない。
──転がっている。思考が悪い方に。
頭をかいて誤魔化した。
でも選んだから。
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ほんとにさあ。
好きな子にあそこまで言わせて、可愛い子をあそこまで泣かせて恥ずかしくないのか。
恥ずかしいったらありゃしない!
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後悔するなら、その中で最善を選ぼうとしていたのだ、自分も。
その最善がクソみたいな独りよがりで、自己都合で、八つ当たりで。
消えてしまうことだったんだけども。
ぜーんぶお見通しだったらしい。こりゃ叶わない。
手札のカードは向こうのほうが持ってる。でも、それを切るのが本人にとってどれだけやなことなんだろなって想像に硬い。
その上でそれを切るくらいに思われてる。
否定しようとしたんだけどね。
下手に人に関わりすぎるってこれだ。線引きが下手くそ。
なら全部忘れさせちゃった方が楽だと、そんな暴力を振るってもよかった。
“目”にはそれをやって、元のところに戻ってもう一度使うくらいの力は溜まっている。
ひでえこと。ひでえことで。
じぶんのことなんかそんなことでそんなふうに思う必要がなく、しかし君の望みの方が自分の望みよりもどう考えても正当性があり、八つ当たりより純朴たる先に対する願いが──
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頭をかいている。
ひたすらシンプルな話。
好きな子が好きだって言ってくれて、泣きながら手放したくないって言ってくれた手を切りたくなかっただけ。
理由をひたすら並べたところで気持ちに打ち勝てないなんてことはよくわかってるはず何だけども。
別例などなく、気持ちに引きずられている。
理性より衝動かもな。
生きてるからさ。
なんとまあ情けない話。
──自分の負け!
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」
冷静になって、肩の荷物少し下ろした。
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幻覚の声はそうそう消えやしないけど。
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なんだか、笑っている。
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そうしてあげたかったことがたくさんあるから。
抱きついてきた時に抱きしめ返せたらとか。
不安な時に手を握れたらとか。
手中の中は温もりに満ちてる。優しさで蕩かされてる。
この優しさが邪悪っていうなら、そっちの方が間違ってるって言い張れるくらい。
人を思った上の優しさが、悪になんてなってたまるか。
なんてね。なんて。
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──どこにもいなくならないよ。
だから、前の世界の話。
破滅への支度じゃなくて、昔話だ。ただのね。
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いつでも使えるけどさ。
ちょっと使い道を考えている。
interval:私はあなたに付いて行く
「俺ってほんとにバカかも………」
顔を覆って顔を隠して、頭を抱えるようにして座っている自室の中。
窓を開けてあるから緩く部屋の中を揺らしていく。初夏の熱を含んだ風は緩くて生暖かな湿気を含んでいて、ちょっとべとついている。
空の方は見ないようにしているから、今は星の声はシャットダウンだ。
みなければ声は聞こえないから。
考えている。考えている。
「……」
これで本当に良かったのかを考えている。
全部投げ捨てている。
全部放り投げている。
責任。願い。受けたもの。
裸足で逃げ出して後ろを振り返らずに走り出したようなものだろう。
自分だけ甘い優しい方向に向かっている。
手触りの良くて明るい方へ。
板挟みになっていたのの、片方の板を割って、閉塞感から逃げ出すように。
板挟みでは動けないから、いつかは選ばなければいけなかったのだとしても。
この選択は本当に正解か?
正しい方を選ばなければいけない。
もらったことは成し遂げなければいけない。
自分のことは割とどうでもよくて、他を考えなければいけなくて。
誰かの声が責め立てるように聴こえている。
「……」
「……でもさあ」
これは言い訳だよ。言い訳。
板挟みから解放されて振り返ってみて、三者として自分を見た時の話。
正直自分の事情なんて自分をひたすら絡めて動けなくなるものでしかない。
やらなくてはいけないことは、やらなくてもいいことだから。
やったところで成功確率なんて大したものじゃないことはわかりきっていること。
切られたチケットの端は焼けこげている。
自分だけ生き残ってしまった罪悪が自分の心を焦がしている。
生きてる人の責任。本来は殺されるべき人間の。
ただそこに罪はないと言いたい。
罪はないと言いたい。
静かに一人になると聞こえている、なんてことは自分でもわかっている。
もういないものから声はしない。
停止したものから、声はしなくて。
生きてた頃の過去の方から無理やり音を引っ張り出しているだけだった。
生成をしている。自分を虐めるだけの行為の音にしている。
最悪だ。最低。クソッタレ。冒涜行為。
そうしてないと吐きそうだ。いつまでも視界が回転し続けている。
人と喋ってる時は“スフェーン”でいればいい。
話してない時はこうなっている。
臆病で情けない、くだらない、つまらない。
──転がっている。思考が悪い方に。
頭をかいて誤魔化した。
でも選んだから。
「……」
「いややっぱ情けないだろ……」
ほんとにさあ。
好きな子にあそこまで言わせて、可愛い子をあそこまで泣かせて恥ずかしくないのか。
恥ずかしいったらありゃしない!
「何を選んだってどうせ後悔するなら、その中で最善を選ぶしかないから」
「何を選んだってどうせ後悔するなら…」
後悔するなら、その中で最善を選ぼうとしていたのだ、自分も。
その最善がクソみたいな独りよがりで、自己都合で、八つ当たりで。
消えてしまうことだったんだけども。
ぜーんぶお見通しだったらしい。こりゃ叶わない。
手札のカードは向こうのほうが持ってる。でも、それを切るのが本人にとってどれだけやなことなんだろなって想像に硬い。
その上でそれを切るくらいに思われてる。
否定しようとしたんだけどね。
下手に人に関わりすぎるってこれだ。線引きが下手くそ。
なら全部忘れさせちゃった方が楽だと、そんな暴力を振るってもよかった。
“目”にはそれをやって、元のところに戻ってもう一度使うくらいの力は溜まっている。
ひでえこと。ひでえことで。
じぶんのことなんかそんなことでそんなふうに思う必要がなく、しかし君の望みの方が自分の望みよりもどう考えても正当性があり、八つ当たりより純朴たる先に対する願いが──
「……」
「……御託並べて考えても」
「……」
頭をかいている。
ひたすらシンプルな話。
好きな子が好きだって言ってくれて、泣きながら手放したくないって言ってくれた手を切りたくなかっただけ。
理由をひたすら並べたところで気持ちに打ち勝てないなんてことはよくわかってるはず何だけども。
別例などなく、気持ちに引きずられている。
理性より衝動かもな。
生きてるからさ。
なんとまあ情けない話。
──自分の負け!
「……」
「よくよく考えると好きな女の子ほっぽっといてあんたらのところにきましたなんて言ったらハロームめちゃくちゃ怒るだろうなァ……!
冷静になって、肩の荷物少し下ろした。
「ダリアには腹抱えて笑われそうだ」
幻覚の声はそうそう消えやしないけど。
「カルミアに本持ってないのに平手絶対されるし〜〜〜……」
なんだか、笑っている。
「………」
「素直に手とか握っても良いんだろな、多分」
そうしてあげたかったことがたくさんあるから。
抱きついてきた時に抱きしめ返せたらとか。
不安な時に手を握れたらとか。
手中の中は温もりに満ちてる。優しさで蕩かされてる。
この優しさが邪悪っていうなら、そっちの方が間違ってるって言い張れるくらい。
人を思った上の優しさが、悪になんてなってたまるか。
なんてね。なんて。
「……」
「………幸せ者だな、俺」
──どこにもいなくならないよ。
だから、前の世界の話。
破滅への支度じゃなくて、昔話だ。ただのね。
「………」
「………目、使う必要なくなっちまったな」
いつでも使えるけどさ。
ちょっと使い道を考えている。