RECORD

Eno.68 Daliusの記録

月下の怪物

×××

その異形は、その土地の女神が外から来た怪物と交わって生まれたとされる。
人面有角、空にあって月を覆い隠すほどの大翼
身の毛もよだつ鳴き声を上げ、強力な長い尾と鋭い猛禽の鉤爪で——

人々に仇なすものを打ち払った。

×××

存在自体はひどく土着的ローカルだ。
母たる女神のほうはといえば、こちらも土着の信仰とはいえ若干の記録や遺構が残されている。

この神獣の信仰においては更に限定的な範囲に伝わる言い伝えのようなもので、
同じ神話の中でも、あくまでその周辺での伝承にしか登場しない。実態のわからない。

いまとなっては名前もわからない。

×××


人々の夜と眠りの守護獣。
そう在るべしと女神ははが定めた。
望まれた通りに在って、それから——





信仰は断たれるもの、改宗に応じた人々。
信仰は絶えるもの、異教として迫害された人々。
信仰は潰えるもの、抗って殉じた人々。


さようならば、仕方なく。
月のない夜、それは吸血鬼かいぶつに変じようか。

そうあれかしと吸血鬼きょうだいが願った。
望まれた通りに在って、それから——









「もう、夜も遅いから」



おやすみ、良い夢を。