RECORD

Eno.34 シャルティオの記録

【14 まだ先の話】

 
 少なくとも僕は、この大会が終わるまでの間オンシーズン中
 この世界にいるつもりだ。
 休暇目的。僕はちゃんと休めているかな?

 久しぶりに戻ったダイナーは、
 やっぱりあったかくて、
 僕の大好きな居場所でした。

「──ただいま!」


 みんなのことが、大好きなんだ。

  ◇

 こんな大好きな居場所でも、ずっとはいられない。
 元の世界に帰ったその時、僕に何が待ち受けているのか、
 部屋でぼんやりと考えていた。

 ひとつめ。僕はそのうち、隣国の姫と婚約するらしい。
 僕は北大陸で一番大きな、魔導王国の王様だしね。
 これは政略結婚、分かっている。
 でも僕なりに、その姫君──シャルロッテを愛するよ。

 愛なんてよく分からない僕だけれど、
 嫁いでくる姫君に、悲しい想いはさせないからね。
 君と一緒に過ごすうちに、僕は何か掴めるでしょうか。

 その姫君は兄さんの友達、ファブリツィオ王子の妹なんだって。
 婚礼の日はいつになるやら。日取りは未定。
 戦争が終わってそこまで過ぎてないし。
 ゆっくりと色々を進めていけば良いよね。

  ◇

 ふたつめ。出来るならこれは急いで対処したいな……。
 アンディルーヴ魔法研究局、通称、魔局。
 魔導王国に昔からあり様々な研究をしているそこの、
 闇がひとつ、暴かれた。

 魔局長ルフィードは研究と言って子供たちを攫い、
 非道な実験の対象にし、戦争の道具にしてたという噂。
 戦勝の裏にはそんな、改造人間たちの活躍もあったのかもって。
 ……そんなの、見過ごせるわけ、ないじゃん。

 魔局の裏の顔のこと、歴代の王たちはみんな無視してた。
 魔局の研究は確かに魔導王国の発展に役立っていたから、
 裏で踏みにじられる子供たちの悲鳴を、
 みんな見て見ぬ振りしてたんだって。

 ……そんな悲劇、僕の代で終わりだよ。
 だから僕はいずれ魔局に踏み込んで、
 悪事を白日の元に晒して、子供たちを救ってみせる。

 どんな理想や悲願があったのかは分からないけれど、
 誰かを犠牲にして得られる研究成果なんてさ、
 僕、許すことが出来なくて。

 その時は無茶することを許して欲しい。
 戦闘になることを覚悟している。

  ◇

 いつかの話。
 魔法至上主義を掲げ、素晴らしき栄華の裏で、
 数多の声を踏みにじってきたこの国が、
 もっと良いものになることを僕は願っている。

 僕は弱き者たちの、
 踏みにじられてきた者たちの痛みが分かる王。
 日陰にも目を向けて、彼らを日向に導けたなら。

「……兄さん、見てて」


 遠い遠い何処かから、僕の紡ぐこの治世を。
 シャルティオ王は、嘘つきにならない。
 「いつか」は必ず現実になるんだから。

「…………」


 まだ先の話。未来のはなし。
 部屋の中、想いを巡らせていた。