RECORD

Eno.105 《5i.残酷》の記録

おとぎばなし ろく

女の子は泣きました。
女の子はとてもとても後悔しました。
女の子は許されないことをしました。
女の子は生きてちゃいけないと思いました。
女の子は口の中のものを全部出そうとしましたが、怖くて、できなくて、大人の人がそれを見つけて、何度も優しくしてくれました。

大人の人は女の子が落ち着くまで、何日も何日も、そばにいてあげました。

「とても悲しいね」

大人の人は女の子がお母さんを食べてしまったことを、誰にも会いませんでした。

「もうどうしようもないって、思っているね」

大人の人は女の子の気持ちに、寄り添ってあげました。

「いなくなりたいって思ってるだろう?」

大人の人は女の子を励ましました。

「でもね、××××。
 お母さんはきっと、後悔はしてないよ」


大人の人はお母さんとした話を、女の子にしてあげました。

「お母さんは言ってたんだ。
 『あの子がまた目を開いて、笑顔を見せてくれるなら。
 私はどうなってもいいのです。
 あの子が綺麗に育って、幸せになってくれるのなら、他に何もいらないのです』
 お母さんは、そう言って私を頼ったんだ。
 だから、私はお母さんの望みが叶うように、手を尽くしたんだよ。」 


大人の人は、女の子の髪を優しく撫でながら話しました。
女の子の髪は、前は金が混ざったクリーム色でしたが。
今では、真っ赤に変わっていました.
女の子が、血を沢山のんだ証です。

「お母さんが大事かい?
 なら、お母さんの思いを、大事にしよう。
 君は、お母さんに愛されてたのだから。

 お母さんが望むように、綺麗に育って、笑顔で笑って。
 幸せだと、見せてあげないと。

 でないと、きっといなくなってしまった、お母さんも、とても悲しんでしまうから」



大人の人は、とても優しく、女の子にそう言いました。
女の子はそれでも悲しいけれど、でも、その通りだと思いました。


「お母さんが何かあった時。
 私が彼女の代わりに、君のことを家族として育てると約束したんだ。
 お母さんはね、自分がいなくなってしまった後の××××のことも、たくさん、考えてくれていたんだよ」


だから。
大人の人はお母さんが亡くなった後、お母さんが持っていたものを、しっかりと引き取れるようにしていて。
お母さんがいつ亡くなったとしても、これまで通りの生活ができるように、準備だけは欠かさなかったのだと、そう言っていました。

「××××。
 私は、まぁ、君とは血は繋がっていないけれど。
 私は、君の事を家族だ、と思っているよ。

 お母さんが亡くなった今、私にとっての、ただ1人の家族だ、とね」



そう言って。
大人の人は女の子の胸から生えた、蕾ができ始めた茨に優しく触れました。

とても優しく、とても、安心できる声で。
女の子の涙を、掬ってあげました。

「君にとっても、私が家族であるといいな.
 パパ、なんて呼ばれるのを、少し夢見てたりもしたんだ」




そうして。
女の子は、生きていくことを決めました。
お母さんのために。
新しい、『パパ』のために。
喜んでもらえるように、生きていかなきゃと、思いました。