RECORD

Eno.270 タニムラ ミカゼの記録

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 結局俺は、君の部屋を綺麗にする事ができず。
 友人に助力を頼む事になった。

 友人は初め、妙な物を見るような目で見てきたが。
 次第に憐れみと、いずれ自分にも来るだろう終わりに目を向けていた。

 正直、君の部屋に他人を入れたくなかった。
 君との思い出に誰かが介入してくるような気がして。

 ただ、俺はこれ以上手を進めることができず。
 過去に置いたものから、いつまでも離れられずに居る。

 いつも後ろを向いて、君が目を瞑った場所を見つめてしまう。
 君の肌のように真っ黒の方へ、手を伸ばそうとしてしまう。

 それは、君の望んで居ないことだ。

 分かっている。分かっているんだ。

 それなのに、君の名残跡が。
 君の好きだった物たちが。
 君の居た欠片たちが。

 それを全部捨ててしまえば。
 今でさえ、曖昧な君。朧げになってしまった君の顔を。

 今度こそ、思い出せなくなってしまいそうで。

 怖い。
 俺の愛は、何だったのかと。
 何も、確かめられなくなってしまいそうで。

「花」


「咲いてるね」



 部屋に来た友人が、呟いた。

 君の身体から咲いた花。
 芽吹いた種を撒いて、育てて。

 再び咲いた、白い花。

「ああ」



 花は、人の手で遠くまで咲いていける。

「ああ………」



 もっと遠くに行きたいよな。