RECORD
Eno.794 芍薬の記録
◾️ 音声記録:◾️日
プツン、と録音開始の音声⋯⋯
3回のノック音が聞こえる。
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失礼します、と答え部屋に入っていくのは女の声だった。
年齢で言えば⋯20代後半から30代のしっかりとした大人の声。
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コツカツと机を苛立ち紛れに叩くのは、爪の音。
クックと呼ばれた女はかなり虫の居所が悪かったらしいが⋯
2、3回すれば冷静になって席を立つ。
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よくいうわ。とどこにでもない言葉をこぼしたのち、
ギシと揺れる縄の音が入ってくる。
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招かれた女からやれやれ、と諦めのため息。
わかりました。と扉に手をかける音。
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早く出ていきなさい、という女の声はどこか、もの悲しそうではあったが
それは無責任な感情であるというように、迷いを押し込めてもいた。
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長い沈黙。クックにとって、その『ノルアティア』という名前がよっぽど
思入れの深い言葉だったらしい。記録であるのに、空気がとても重々しかった。
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はい、と出ていく寸前の女が止まる。
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ギイと扉が動く音。そして、重々しい空気と共に部屋の中へ閉じ込めていった。
3回のノック音が聞こえる。
「どうぞ。」
失礼します、と答え部屋に入っていくのは女の声だった。
年齢で言えば⋯20代後半から30代のしっかりとした大人の声。
「⋯⋯お久しぶりです、クックさん。
まさか、このような形で再びお会いできるとは⋯」
「丁寧な挨拶は結構。
あなたが後始末で呼ばれることは予知できたことよ。」
「⋯⋯相変わらず手厳しいですネ⋯」
コツカツと机を苛立ち紛れに叩くのは、爪の音。
クックと呼ばれた女はかなり虫の居所が悪かったらしいが⋯
2、3回すれば冷静になって席を立つ。
「⋯⋯⋯、あなたまた妖気がつよくなったんじゃない?」
「そ、そうですか⋯?私は至って普通の人間なので⋯」
よくいうわ。とどこにでもない言葉をこぼしたのち、
ギシと揺れる縄の音が入ってくる。
「あとはあなたの良きように。
とりあえず部屋から出てくださる?
一人で大丈夫です。
初めてのことではないのは知っているでしょう。」
招かれた女からやれやれ、と諦めのため息。
わかりました。と扉に手をかける音。
「⋯いいんですか、このプレゼントの山。
いつもですけれど、処分しないといけないのに。」
「⋯⋯⋯」
「あ、もしかしてまた押しに負けたんですか?
そういうところありますよね⋯」
「お黙り。」
早く出ていきなさい、という女の声はどこか、もの悲しそうではあったが
それは無責任な感情であるというように、迷いを押し込めてもいた。
「⋯⋯では、また後ほど伺います。
⋯ノルアティアさんは元気にされていましたよ。
すこし体調は崩されておりましたが、回復に向かっております。」
長い沈黙。クックにとって、その『ノルアティア』という名前がよっぽど
思入れの深い言葉だったらしい。記録であるのに、空気がとても重々しかった。
「⋯⋯⋯⋯失礼します。」
「⋯待ちなさい、テンコ。」
はい、と出ていく寸前の女が止まる。
「あとで、お芋でも焼いて、配ってちょうだい。
⋯よくお腹を すかせてる子がいるの。」
「⋯了解しました。
それでは、わたしはこれで。」
「ええ。お疲れ様。」
ギイと扉が動く音。そして、重々しい空気と共に部屋の中へ閉じ込めていった。