RECORD

Eno.48 Siana Lanusの記録

├経過06

*

それからしばらく。
体調が急激に悪くなることも減り、
フルテスが傍に着いていない日も増えた。
サボり目的であったことを神父にチクったのと、
私の容態が落ち着いたのとで仕事を押し付けられるようになったのだろう。

物資が不足し、街から支援も得られず、村は厳しい状態らしい。
……何故そんな状態なのかは、想像に難くない。
そんな状況で甲斐甲斐しく世話をしてくれたのだ。
あまり表に出す事は無かったが、大変なことだったろう。

「…………」



ベッドに座ったまま、脚をぶらぶらと動かす。
右脚は動かすと痛むし、痛まない左脚も感覚が遠い。
1ヶ月以上寝たきりだったせいだろう、
立ち上がってみずとも、脚が身体の支え方を忘れているのは明白だった。

「…………出ていくのは、まだまだ無理、ね」


脚も腕も、壊死していないだけ幸いだ。
かなり状態は悪かったろうに、うまく動かない程度で済んでいるのは
フルテスたちの治癒術のお陰なのかもしれない。

……幸いだと、思うしかない。
今まで通り動けないとしても。

「……………………」



扉の向こうから、賛美歌が聴こえる。
今日は境会の安息日であるらしい、
創壁神を讃える歌が、聴こえてくる。
混沌から我ら人間を掬い上げ、
護ってくださった創壁神への恩義から、
この平穏を守り続けると、誓う歌。

「………………っ、」



身体の調子が治ってきたせいで、思考が回るようになってきていた。

自分たちを邪教徒と呼び惨殺した境会と勇者への感情が、ゆっくりと、煮えてくるのを感じる。
腹の底が押し上げられるような感覚。
現状への嫌悪感が、喉を伝って込み上げて来そうで、
意識的に息を吐いて、吸って、深呼吸を繰り返す。


……死なないため、死なないためだ、今だけ、今、今は、


    ──その“今”は、一体いつまでなのだろう。

どく、と心臓が煩く脈打った。
眩暈がする気がして、顔を片手で覆い隠す。
こらえた感情が、喉に詰まるようで、息苦しい。



早く、
   でて
        いかないと。





(こわれてしまう)




そう思おうと逃げ出せる訳はなく、
身体を支えられない脚は膝を着く。
どさ、と揺れ打ち付けた身体は痛み、目も回る。

床にぽつぽつ落ちるものがあると思えば、それは汗だった。


「………………、……いつ、まで……」





屈辱と、憤怒と、嫌悪と、拒絶と、
悲嘆と、疼痛と、不調と、恩義と、
とぐろを巻く激情とままならない現状とを。

一体いつまで、どうやって解消すればいいのか、
心身ともに追い詰められた私に、自問する余裕は無かった。






*









「シアーナちゃん?大丈……」


「わあっ、どうしたんですか?!どこかに行きたかったんで……」



「ひどい顔、……怖い夢でも見たんですか?
大丈夫、大丈夫ですよ」


「あなたを傷付ける人が来ても、わたくしが護ってあげますから!」



「……だから、まだわたくしたちを頼ってくれていいんですからね」