RECORD

Eno.276 リベレの記録

薄翅:Ⅶ

***

彼女は普通の少女だった。
学校に行きながら、インターネットで自分の趣味を楽しむ女の子。
蜻蛉トンボ/カゲロウを意味するハンドルネーム。

ちょっとだけ学校では浮いていて、少し嫌な思いをしたこともあるけれど。
自分の世界に没頭することで、そんなことは忘れられた。

ネットの海は少女には広かった。
だけれど、その中で彼女は、自分の実力を試したいと思うようになる。

***

夢というには淡すぎたそれは、
17歳になった時にあっさりと潰えた。
持病を悪くして、入院生活を送ることになったのだった。

朦朧とした意識の中で、
妄想に逃避することで、
少女は生きる希望を見出そうとした。

やがてそれも叶わなくなった時、
少女を憐れんだのか、誰かが声をかける。

ありきたりな、願いを叶えるおとぎ話。
チャンスをください、と願ったかわりに、
少女はこれまでの全てを失って。

この闘技の世界へやってきた。
彼女の武器は、彼女の創る物語。
槍を持つ主人公がそれに導かれて。

少女が出会った、写し鏡のような少年は。
まぎれもなく、自分がなりたい姿をしていた。

***

──だけれど。
そんなことは、もうふたりには関係はない。
思い出されることのない話。

少女たちは知っている。
人間の本能に闘争があることを。
受け入れている。
自らの中の戦いたいという気持ちを。
挑戦したいという炎を。
生きている証明を、残したいという気持ちを。
なりたい姿に、なるという決意を。

それに気づかせてくれたのは、
勇気をくれて背を押したのは、
友だったということも。



陳腐なフィクションであったとしても、構わない。