RECORD

Eno.134 キィランの記録

【4 悪魔の星は望まない】

 
 最悪な人生だった。
 俺は俺の己の歩んできたこれまでを、
 良いものだと胸を張って誇ることは出来ない。

 地獄の底にいたら救われた。
 気紛れ風が、笑っていた。
 殺され掛けてた俺を庇って、
 『そんなに言うんなら俺が引き取る』なんて。

 俺はそこだけは運が良かったんだろう。
 最悪な人生に、光が差した。

 馬鹿みたいだと思ってた。
 何でこんなクソガキを助けたの?
 俺なんかよりももっと相応しい人はいるのにさ、
 気紛れ風が吹いたのは、俺の方。

 スラムのどん底で、生きていくので精一杯で。
 そんな俺に、あのひとは“理由”をくれた。居場所をくれた。
 そして俺は、確かに救われたんだ。

   ◇

 “悪魔の星”は望まない。
 そもそもそれは空っぽな赤い星。
 俺の中の虚無? 分かってるさそんなもん。

 “理由”と“居場所”を与えられた。
 だからその場所で役割を果たそうとしてきた。
 それ以上を望まない。望み方も分からない。

 気付いたら俺はあの方から色々を託されて、
 あの方の弟を守る立場になっていた。
 それが俺の新しい“理由”になった。
 俺は新しい役割を果たそうとした。

 あの方にだけは頼ったけれど、
 俺なりに甘えられていたけれど。
 あの方は全てを破壊していなくなっちゃった。
 きっと俺たちは、もう会えない。

 ねぇ、フェン様?
 心の欠けてたアンタじゃ、
 俺の気持ちなんて分からねェよな。

 それこそが貴方の強みだ。
 理由は理解し納得もしているから、
 俺は別れを受け入れた。
 隣でずっと仕えていたかったのに。

  ◇

 “悪魔の星”は望まない。
 そもそもそれは、嫌われ者の赤い星。
 望み方も頼り方も知らないけれど、
 “理由”があるからそれで構わない。

 俺はこれで満足してるんだからさ。
 だからさ、なァ。
 踏み込んでくるんじゃ、ねェよ。

 過ぎたものだ、要らないものだ。
 俺なんかに向けるその心配は、
 他の人の為に取っておいてやれっての。

 バッカみたい。
 みんなみんなお人好しで、
 とんだ酔狂なんだからさ。