RECORD

Eno.160 ノラ・ドニーニャの記録

ないしょの話 それから

その夜は、忘れもしない。

部隊のキャンプが襲撃を受けた。
いや、待ち伏せされてたのか、罠に嵌められたのか。なんだっていい。
大事なのは、それが僕らがいた部隊の力を遥かに上回る、
火とか、砲撃だとか、爆発だとかの魔法を使った大規模な襲撃であったことだ。

とにかく、千尋の谷に突き落とされたかのように。
ろくに「傭兵」の仕事もしたことのない僕は、戦火の中に立たされた。

大人たちは蜘蛛の子を散らすみたいに走り回り、逃げ惑って。
火の色とは違う赤色と、悲鳴と、怒号と、石と、泥が爆ぜる。

何かが掠ったのかもしれない、生ぬるい液体が額から流れてくる。

ぐわん、と頭の中が揺れた。いや地面なのかもしれない。それか空。



僕は、



僕は。


僕、は

ああ。


震えていた。


恐怖だ。


あれは、絶対に。


おまえが望んだ「刺激」だぞ、って、誰かが囁いている気がした。