RECORD

Eno.237 キャス・パリューグの記録

【前日譚 (0)】

 
ある日の昼、宿屋を兼任する酒場にて。
片隅の席に座り、頬杖をついている少女が一人。


「んん……参ったな」


「どうかしました?」


そう声をかけてきた者もまた、幼げな少女。

「おや、久しぶりだね。君と会うのは何時振りかな」


「……依頼を受ける前でしたから、ひと月ほど前でしょうか。
 今は溜まった郵便物の整理中ですよ」


「それはお疲れさま。
 いやね、急にお仕事がキャンセルになっちゃって」


「良いんじゃないですか、休暇と思えば。
 それとも、甘い物に使い過ぎて手持ちが無くなりました?」


「ううん、そう言う訳じゃないんだけど。
 長期になる予定で調節してたからさ、大分余っちゃったんだよ」


「ああ、それは貴方にとっては大変ですね……あ」



「では、こちらなど如何でしょう?」


そう言うと、相手は手に持った郵便物の中から一通の封筒を差し出す。


「何コレ、君宛の手紙じゃないの?」


「暇を持て余した貴方にぴったりの招待状ですよ。
 私は行きませんから、読むも捨てるもご自由に」



「それでは、良い休暇を。
 ちゃんと戻してきてくださいね」



「? そっか。ん、ありがと~」


立ち去る背中へ、袖をひらり。


「休暇かあ……旅ならいつもしてるんだけど。
 仕事なしで遊びに行くのも悪くないか。うん」



「ま、それも招待状の内容次第だけど」



話をする前よりも声を弾ませ、少女は二階にある部屋へと戻って行った。