RECORD

Eno.237 キャス・パリューグの記録

【前日譚 (-1)】

 
賑わう大通り。行き交う人々。
大きめの上着を翻し、少女はその中を泳ぐように歩いていた。


「~♪」


すると、すれ違う人々の中から一際派手な緑髪の青年が現れる。

「あれ、キャスだ。久しぶり!
 新しい上着? 君はよく服が変わるね」


「おや、奇遇だねハルプ。
 拾い物だよ~、良い生地でしょ」


見せつけるように余った袖を振る少女に対し、青年は訝しげな目線を向ける。

「いつも思うけど、それって本当に拾い物?」


「ほんとほんと」


「それなら良いけどさー……
 良い素材使ってるみたいだけど、僕の趣味ではないね」


「そっかあ、残念。
 あ、今日は相棒くんは一緒じゃないんだ」


「勉強会に行くからお留守番だよ。
 そう言う君は何処にお出かけ?」


「ふふ、学校に行ってからすっかり勉強好きだねえ。
 私は道具屋にちょっと。長旅の予定があってさ」


「そっか、気を付けてね」


「うん、君も勉強頑張ってね」


「言われなくとも頑張るさ。じゃ!」


にっと笑って返せば背を向け、その姿は雑踏に紛れて消えて行った。


「……あの子、あんまり下向かなくなったなあ」


しみじみとその背中が見えなくなるまで見送る。
青年の姿が見えなくなった頃、少女も目的の店に向かって再び歩き出した。