RECORD

Eno.57 テル・メルの記録

▼前日譚 *ある

Pos:レッカーゾーン第4層[壊世墓場]

*砂漠では時折、図形を見かけることがあった。
*宙に浮く、薄く白けた線と図形。

「……」

*何かあるように思えたけど、結局どれも“ない”だった。
*ただ浮いてるだけ。
*目の前でパラパラと消えて行くものもあった。
*そうしてまた少し、砂が満ちる。

「……」

*寂しい。

「……」

*虚しい。

「……」

*おなかがすいて、チュロスをかじる。

「……」

「……」

「……」



「……」「……?」

*図形が見える。
*もう見慣れた、白けた図形。

*図形が揺れるのは、いつも崩れる合図だった。
*図形たちは、どうにも自分の三角形を彷彿とさせて
*“どこか”にたどり着かなければ、自分も同じように消えてなくなる
*そんな想像に、少しだけ涙してきた。

「……」「……っ」

*白けた橙色の図形がテルルを見つめている。

「……」

*見つめ合う。
*何秒だって、何時間だって。

「……」「お前」

「“ある”んだな」

*そんな言葉が、自然と零れた。



 ☆彡



「アルっ」「見ろよあれ」「ヘンテコな」「形の」「岩っ」

*少女は駆ける。
*とっくに時間の感覚はなくなった。
*空腹の感覚すらなくなった。

『お前』『“ある”んだな』

アル』『お前は“ある”から』『今日から』『アルだっ!』

*でも、少しだけ
*少しだけ、寂しくなくなった。
*虚しくも、なくなった。

*少女は駆ける。
*そのあとを追うように、橙色の図形が踊る。
*翼の生えた楔形
*今日もまた、彼は少女を見つめていた。