RECORD

Eno.48 Siana Lanusの記録

◇62

海を見て、悲しいものに感じなかった。
──還りたい気持ちはあるが、それよりずっと
  清流の意志を至らせる方が、大事なことだ。



傷痕も火傷も残っている。
皮膚を引き攣る感覚も、あまり動かすと痛いのも変わらない。
とはいえ大した痛みでは無い。体力が足されてるのか、余り気にならない。
右手が動く、足首が動く。
筋力まで完全に……とまでは行ってないみたいだけど、
日常生活に支障はなさそうだ。
左手に慣れすぎてしまって、右手が使えるかちょっと自信無いけど。
両手武器でも試してみてだな。



心の方は、あとはどうだろうな。

“壁”に気付いてしまったけど、……苦しくは無いな。
虚しさみたいなものは感じるけど、
だからと言ってこの意志はやめられない。
……帰らないとと思う気持ちは無くはないけど、
同意できない理性の意見のが今は強い。
神に歯向かうことなど出来る訳ないのだし。
             ──この女が知り得たのは、“世界が勇者のためにあること”だけ。
              

破滅願望は、無い事は無い。
勇者たちの事を想うと、嫌な気分にはなる。
役立たずだという感覚は、残ってはいる。


けれどこの流れの前で障害になるほどの物ではない。

流れよ、流れよ。
我らは留まらぬ急流である。