RECORD

Eno.111 アルバート・ヴァイルシェールの記録

望むままに与えましょう

「俺が小さかったころの話。
 俺の世界ってのは、祭祀場と奥の隠し部屋だけだった」

「地下な上に窓もねぇ。最低限だけがあったかな。
 比較対象がねえもんだから疑問はなかったけど……」

「必要んなったら隠し部屋から取り出される……みてえな……
 大事に大事に仕舞われて、祭祀場にもずっとは居なかったな」


アルバート……ってのはまぁ……
 火神の贄に相応しい子を作ろう!のノリで出来たガキだったわけだが……」

「無事最初から理想が生まれて、そりゃもう喜んだらしい。
 物心付く前からじっくり痛みを教え込むぐらいにはな」

「後から考えると、俺はもうそんときに壊れてたのかも。
 心より思考より、異常に適応するようにって」

「まぁ、そう、生きるために」

「全部絶たれて、言葉も学べねぇ世界で、
 苦痛だけが俺とだれかの繋がりだった、」


「そんなでも今で言う"嬉しそう"ってのはわかっててさ。
 俺が受け入れれば親父もお袋もそうで……」

「俺もうれしい、って覚えた。
 当時は何て言うのかわかんなかったんだけどさ」


「何時だったかな……祝福ついたのが確か3歳らしいからそれより前か。
 背中にでーっけぇ烙印つけられてさ」

「火でバッチバチに熱した奴。ゆっくりしっかり、こう……
 俺にとっちゃ一大イベントだったもんだからめっちゃ耐えたね」

「暴れもしなけりゃ悲鳴すら上げなかったんだと。
 痕が綺麗に残ったあと、俺は祝福を授かった生贄の資格を得た

「この日が一番の思い出なんだと思う。
詳細は後から知ったんでも未だに感動だけ覚えてんだもん」


「んで無事箔がついてからは他の奴にも会うようになって……
 出来た認識が神の子」

「肉ってよりは使者、いずれ還す……返すもの……?」

「火神の色をして、最年少レベルで祝福を授けられて、で
 尊い存在扱い染みてきた俺から傷を得たいって奴もいて……
 俺の対話手段そのものだからさ、喜んでそうしてた」

「やっぱしあわせだったんだと思う。
 与え、与えられることが。治るようになったから儀式的に傷は貰ってたし」

「今でもびっくりなんだが、そこそこ育ってもまともに言葉を知らなかった!
 言語化できねぇ気持ちは沢山あったんだが!
 もっと主に仕えたいし皆に捧げたいから死にたくねぇとかな」

「じゃあなに話してたんだ?っつうと教えられてた定型文ってか……
 よりよきよう、あなたの望むよう、てか……」

「おっそろしい話だけど、意味なんかほぼ知らなかったよ。
 そうするとみんな喜んで俺もうれしいてだけ」

「あなたのよりよきように、ってのが言語化したら完全一致だったもんで
 今でもずっと言ってんのかも。」


「俺が言語化できねぇ我儘ごねて、バカ言えお前は人の子 みたいな神託が来て……
 要求が命から魂に変わった証拠の祝福2個目がついた」

「そっからは必要な者もいるって感じで肉も削いで渡すようになったかな。
 儀式とか悪しきを祓うのに便利だったんだろうし」

「俺の中ではっきり信仰が形んなったのも2つ目ついてからかもな。
 何の存在へ真にこの身を捧ぐべきか理解したっつか……」

「流石にこの頃になると見よう……つか聞き真似?で言葉は話してたが……
 何か俺と火神にしか通じない造語が多かった記憶があんだよな……」


「……うん、」


「これが、うちの派閥が外で掃討されて……
 監禁されたまんまの俺が保護されるまでの10年間」

「ここから地獄が始まった」