RECORD

Eno.7  の記録

*秘蔵書庫

 
「この部屋への立ち入りは許可していない筈だが。……いや、そもそもどうやってこの部屋を見つけ出した?」
「――ぁ、」

時は10年遡る。
教会本部の最上階にある私室兼書庫。
350年以上もの間綴られ続けた日記は単な書室と称するにも多すぎるほどの物量と情報を抱え、
長年都市を見続けてきた結果の生き字引であり、著者である神父の内情を記されている為に部屋の存在すら秘匿されている。
鍵を幾つか掛けた上で他者には悟れぬ様に阻害の術を施し、その上で干渉があれば知覚の出来るようにされていた部屋だ。
そこに、鼠が紛れ込んでいる。

「答えろ、ジュヘナザートの末。何故アンタはここに居る。誰の手引きだ」
「は、はい――申し訳ありません。ここでならば、…っ、ここでならば、
ぁ あたしの知りたい事が知れると、思い……申し訳ありません、申し訳ありません!

……これは、すべてあたし一人で行ったものです。鍵も、祈りによる障壁も全てあたしが」
「アンタ一人で? 冗談だろ」
「嘘偽りはありません。今までに数度、この部屋に立ち入りましたが……誰の手も借りてはおりません」

恐らくは真実であった。
この時、既にジュヘナザートの姉の方は下層に左遷されてから5年ほど経過していた。
目の前に居る妹の方に焦点を当てるのならば、罪人の家族と言うレッテルのお陰で幼いながらに相当な仕打ちを受けていた筈だ。
故にそんな小娘でどうこうしようだの、話を聞こうなどと言うものは居ない。単独犯だった。

「一人で、しかも常習犯ねえ」
「……」
「どこまで読んだ知った
「……古きところから半分以上は」
「随分読み進めるのが早いな。どうでも良い箇所も多いからだろうが」
「いえ、……書面であれば一読しただけで内容を覚えられます」
「……へえ」

その時まで、歯牙にもかけない相手だった。
特別に力が強い訳でも無いし、姉に比べれば特別な信条も無いただの餓鬼。
然しそれが豪胆にも一人で家探しの真似をしている、ならば。

「……まあ良い、今回の事については見逃してやる」
「ほ、本当で――」
「代わりにアンタ、俺の側近になれ」
「えっ」

この先、更なる辛苦を飲ませて野垂れ死にさせるには少し惜しい。
ともすれば使えるようになるかもしれない。


そう成るよう仕立て上げたとは言え、姉にだって殺人鬼の素養があったのだから。
妹も仕立てれば何かにはなるだろう。