RECORD

Eno.345 エイサの記録

無題



疲れていた。

もうないものを想い続けることにも。
まだあるものを恨み続けることにも。
それが永遠に続くことも。この苦悩に終わりがないことも。

それならば、いっそのこと楽になりたかった。






(ああ――そうか)

と、ふと得心した。
頭の片隅で引っ掛かっていた疑問が僅かに解けた。そんな気がした。

『ぼくを必要とする人がいるこの街が、
 ぼくを必要としてくれる彼の隣こそが――ぼくがいるべき戦場場所なんだ』


          ・・
(十九号、おまえも、そうだったのか?)


同じ戦場を歩いて、同じものを抱えていたはずの彼が、どうしてそんなことを言いきれたのか。
わからなかった。
ずっと、ずっと、わからなかった。


……それが、今なら少しだけわかる。



あの腐れ縁は、あの青年に希望を見たのだろう。

そして、あの青年にとっての『何か』になることを、赦して貰ったに違いない。




そんなことに、今更のように、気が付いた。