RECORD

Eno.3 『夜凪の鴉』の記録

拝啓、大好きな君へ

――あの満天の星空が、金の杯に満たされたあの夜。

半分に分けられた祝福の杯を飲み干した、あの日。

僕はというと、時折うなされていた夢を、再び見た。


――それは、自分の世界から飛び出す直前の、夕暮れ時。
想い人との、別れの思い出の夢を。

いつもならば、早く目を覚ましてほしいと懇願していたが。

今ならば。


「……ねぇ、シュル。
 ローナから聞いたわ。長い旅になるって」

「……そして、あの子の事を、振ったことも」


「……ミラク」


「……ねえ、シュル。
 多分、もう会えないのよね。あなたとは」


「……ああ、多分。
 永遠の別れになると、僕は思うよ」


「……なら、私は。
 あなたに願い事を、するわ。
 絶対、私達以上に、幸せになって」



――今ならば、言える。

「……ああ、勿論!!
 君達よりずっと、幸せだよ、もう!!


「……そう、それならよかったわ」



そう、言い切れば。
安心したかのように、微笑んでくる。

「……ねえ、ミラク。
 突然だけど、抱きしめてもいいかい」


「ほ、本当に突然ね。
 ……いいわ、私も。最後に触れたかったから」



そう、承諾するようにミラクが腕を広げれば。
駆け寄って思いっきり勢いをつけて。

ハグをして、ありったけの想いを。





……君が好きだ!!
 ずっとずっと、ミラクが。
 大好きなんだ!今も、昔も、これからも!!

だから、絶対
 君の事は、忘れないから!!


「……知ってた。あなたが好きだってことくらい。
 私も、大好きよ。
 ……だから、そうね」



「……また、夢でも、もしくは生まれ変わっても。
 私も、忘れないように。
 あなたにいつか、会いに行くわ」


「……ああ、約束だ!!」



その、言葉を最後に。
自室で、目覚めて起き上がった僕は。
ただただ、雫がずっと、こぼれてくるのを、止められなかった。