RECORD
Eno.48 Siana Lanusの記録
└経過08
*
境会に拾われて早くも2ヶ月が経った。
調子の良い日にはフルテスに支えてもらったり壁に手を付いたらしながら歩く練習をし、
固形物も多少食べられるようにはなっていた。
身体的にはどうにかマシにはなってきているが……“マシ”になっているというだけだ。
度々熱は出るし、熱は大したこと無くても頭痛やら吐き気やらで調子が悪い日は多い。
前より体力がついたせいで嘔吐してしまうことも増えているのが、近頃の悩みであった。

その日はベッドに座りながら右手を見ていたが、
僅かに指先を動かしては、諦め調子で息を吐く。
痛み自体はだいぶ落ち着いては来ているのだが、
右手は依然あまり動かすことが出来なかった。
腕は動くのだが指の動きが悪く、
手を握りしめようとしても指先が少し曲がるだけ。
当然ながら力もほとんど入らず、
物を掴むことはおろか、つまむことすら難しそうだ。

手が握れないという事は、武器を持てないという事だ。
それは即ち戦うこと──少なくとも暴力的手段では──は難しいということ。
腕力に任せて武器を振るっていた以前のことを思うと苦しい事実だ。
フラフィウスに戻る手段は未だ取っておいてあるが、
戦えない身でかの地に赴くのは得策では無い。
もう少し回復して、自由に身体が動かせるようになってからでは無いと
資金が足りなくなるのは目に見えている。
……正直なことを言うと、早くかの地に行きたかった。
境会のもとで燻り続けていると、自分をどんどん見失いそうで恐ろしかった。
けれども、けれどもだ、
彼の地で出会ったものたちに自分の世話をさせたくは無いし、庇護対象として見られたくない。
医療技術はあちらの方が優れているだろう、けれども、
生活もままならないうちは、まだ行くべきでは無いと判断していた。
だいぶマシにはなったとはいえ、動かせば節々は痛む。
早く楽になりたい、と漠然と思う思考をそれ以上は追及しないようにしながら、
ゆらゆらと脚を動かして、衰弱へと僅かに抵抗するのだった。
境会に拾われて早くも2ヶ月が経った。
調子の良い日にはフルテスに支えてもらったり壁に手を付いたらしながら歩く練習をし、
固形物も多少食べられるようにはなっていた。
身体的にはどうにかマシにはなってきているが……“マシ”になっているというだけだ。
度々熱は出るし、熱は大したこと無くても頭痛やら吐き気やらで調子が悪い日は多い。
前より体力がついたせいで嘔吐してしまうことも増えているのが、近頃の悩みであった。

「…………駄目ね」
その日はベッドに座りながら右手を見ていたが、
僅かに指先を動かしては、諦め調子で息を吐く。
痛み自体はだいぶ落ち着いては来ているのだが、
右手は依然あまり動かすことが出来なかった。
腕は動くのだが指の動きが悪く、
手を握りしめようとしても指先が少し曲がるだけ。
当然ながら力もほとんど入らず、
物を掴むことはおろか、つまむことすら難しそうだ。

「………………」
手が握れないという事は、武器を持てないという事だ。
それは即ち戦うこと──少なくとも暴力的手段では──は難しいということ。
腕力に任せて武器を振るっていた以前のことを思うと苦しい事実だ。
フラフィウスに戻る手段は未だ取っておいてあるが、
戦えない身でかの地に赴くのは得策では無い。
もう少し回復して、自由に身体が動かせるようになってからでは無いと
資金が足りなくなるのは目に見えている。
……正直なことを言うと、早くかの地に行きたかった。
境会のもとで燻り続けていると、自分をどんどん見失いそうで恐ろしかった。
けれども、けれどもだ、
彼の地で出会ったものたちに自分の世話をさせたくは無いし、庇護対象として見られたくない。
医療技術はあちらの方が優れているだろう、けれども、
生活もままならないうちは、まだ行くべきでは無いと判断していた。
だいぶマシにはなったとはいえ、動かせば節々は痛む。
早く楽になりたい、と漠然と思う思考をそれ以上は追及しないようにしながら、
ゆらゆらと脚を動かして、衰弱へと僅かに抵抗するのだった。