RECORD

Eno.270 タニムラ ミカゼの記録

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 俺の友人―― 聴劣化は、口が上手い。

 純人間の俺を入社させるために、ウッドカットと交渉したのもアイツだし。
 俺の妹を唆して堕胎させたり、最近は仲間の数人に掛け合って石化抑制剤をくすねたりしていた。

 だから今回も、『遺品を燃やすため』ではなく『陶器を焼いてみたい』と嘯いて。
 ウッドカットの近所に住むサトウさんから、登り窯を使って良い許可を得てきた。

 登り窯で、君の大切な物を焼く。
 ある意味コレも、弔いの一つだ。

 骨という素肌ではなく、炭を突っつく事になるのかも。燃やしきれず、残るものがあったとすれば。

 しかし、迂闊だった事があったとすれば。

 陶器を焼いてみたい体で話を勧めてしまったがため、なんと三日間釜に火を入れ続けなければならない。
 ただ焼くだけなら一日でも良いのだが、聴劣化が陶器を焼くと言ってしまったが為に、正規の焼き方をしなければならなくなった。

 アイツ、そういう所あるんだよ。

 君の部屋から少しずつ物を持ち出していく。
 シーツ。服。金属と木の鈴。絵。パズル。折り紙。押し花。ぬいぐるみ。ビー玉。金色のロケット―― 指輪。

 君は、自分で物を持つ方ではなかったから。
 思ったよりも、持ち出す物が少なかった。

 こんなにも簡単だったのかと思ってしまう程。

 燃料の木材も、聴劣化が計算して準備してくれた。

 そうして、カラカラに晴れた暑い日に、火を入れた。