RECORD

Eno.310 佐藤 陽介の記録

契約履行


――それは魔法少女が宿泊施設に戻り、就寝しようかと思っていたある日の出来事。
常日頃持ち歩いている魔法の杖から音声通信が届く。


――佐藤くん。規定試合数達成おめでとう



……まぁ、そろそろかなぁって思ってた



い、一応契約書には必要な試合数を書いてたんだけどね



試合が日常化してたから特に確認する必要も無いかなぁって。そもそも契約書が長すぎる



それでも読もうよ……いや、そういう君だから順応したのかもしれないが



適当な性格をしている魔法少女は
明滅する魔法の杖をベッドに立て掛け、自身はそのすぐ傍に腰を下ろした。
その表情は少し誇らしげでもあり寂しげでもあった。


契約履行により転移が可能だが、一週間程度そちらで身辺の整理をしてからでもいいし、居心地がいいなら転移する時期は好きなタイミングまで伸ばして貰っても構わないよ



じゃあ俺は三日でいいや



はっや! 少なくともそちらの人達とは上手くやっていたように思えるしもっと名残惜しむモノでは!?



確かに良い人達が多くて居心地も悪くはなかったよ



でも、これは“俺の日常”ではない。名残惜しむほど染まったら多分帰るという選択が出来なくなる



魔法少女は何も考えていないように見えて思慮深い部分も持ち合わせていた。
その選択に研究員は理解を示し、残りの滞在期間を三日と定める事にした。


――参考程度に聞きたいのだが、今回の契約や魔法少女になった事を振り返って今、君はどう思っている?



うーん。色々あったしなぁ……



やってよかったと思うよ。金払い良いし



その答えに魔法の杖は暫く沈黙を返す。
ほどなくして明滅と共に再び音声が宿泊施設に届いた。


契約時と変わらない君の考え方を、今は紛れもない強さであったと私は思うよ