RECORD

Eno.266 『暗礁』の夢魔の記録

暗闇の海の中で

夢が現実でないはずがない――そうだろう?」



「少なくともそんな風に思わせたのは、間違いなくアレの存在の所為だ」



「意識と無意識の境界、現と夢の狭間――
 そこに巣食う悪魔。だから、夢魔」



「けどアレは、そんな生易しいものじゃない。
 いずれ現をも侵し、呑み込む暗い闇」



「母なる昏き大海。暗礁の魔……」



「アレは瞬きの間に、一つの街を眠らせてみせた」



「永遠に目覚めない、退廃と享楽の夢の中に……ね」



「もしアレと出会したのなら、キミも気を付けて」



「その気になれば世界すら侵してみせる。そういう類のバケモノなんだ」



「アレがいつも上の空ばかりなのは、その字面の通りだよ。
 "上の空"を見て、虎視眈々と狙っているんだ。次の獲物をね」



俯瞰しているのさ。人々を。街を。国を――世界を」



「……まぁ、自分の領域の外であれば、大人しくしているだろうけど」



「そういう制約なのさ。大いなる権能にも、それを振るう為の決まりがある」



「アレが自分を『観光客だ』と言っている内は、安心するといいよ。
 それならそれで、それ以上にもそれ以下にもなれないはずだから」



「ああ、でも。気を付けて。その気になればいつだって、誰だって」



彼女の中に呑まれる可能性は、少なからず存在するのだから――