RECORD

Eno.57 テル・メルの記録

「抜錨」

「こわかった」
「ずっと」「こわかったんだ」



「俺はきっと」
「お前らが思ってる以上に」
「ずっと」「臆病だよ」



「未来がこわい」
「過去がこわい」
「失敗がこわい」
「成功がこわい」



「漠然とした不安たちは」
「俺に」「俺への疑心暗鬼を与えた」



「友達ひとり」「守れなかった俺への」「不信」


「俺の失敗が」「お前らを傷つけないかという」「恐怖」


「さみしい時」「お前らの隣にいない俺への」「嫌悪」



「そして」「そんな俺に」「お前らを巻き込んでしまいたい」
「そんな気持ち」



「……」



こっちフラウィウスに来てから」
「何もかもが」「俺にとって」「都合が良すぎたんだ」



「世界は等価で回っている」「一本の糸のように」
「たのしすぎた世界の光が」「疑心暗鬼という」「俺の形の影を映した」



「俺のたのしいは」「少しずつ」「影に」「満たされて」
「それはもう」「だめだめになっちゃったっけ」



「何もかもが」「どうどうめぐり」


「一歩も」「進めない」「俺の願いへ」「理想へ」「夢へ……」



『お前の我儘に振り回されたい、その変化は良い物だと思うのは』
そういうモノ以外も全然いると思うよってコト』

「……」「はは」


「たのしいよな」「お前らって」



「俺の恐怖の」「道連れにしたい」


「一緒に」「責任ってやつを」「背負ってほしい」
「ひとりじゃ」「えらべないから」


「そんなのを」「いつも通りの顔で」「許容しやがったやつがいる」



「そいつが言うには」「俺って愛されすぎて」
「他にもついてきてくれるヤツってのが」「いるらしくて」



『だいじょうぶだ』
『にいちゃんがついてる』

「……」「心当たりが」「あったっけ」
「特に」「こわくなるくらい」「俺にとって」「都合が良くて」「良すぎて」



『いまだけじゃない』
『いつでもそばにいるから』

「俺のためなら」「迷いもしない」「最高の」「味方」
「諸々」「まだまだなくせに」「やけに自信いっぱいの」「最強の」「家族」
「やたら器用で」「なんでもできて」「何言っても」「受け止めちゃう」
「時々へんたいで」「空気が読めるのか」「読めないのか」
「でも」「とっても面白くて」「わけわかんない」
「本当は」「閉じ込めてしまいたかった」「それくらい」



『オレはいつでもおまえの味方だ』

「最高の」「おにいちゃん」



「……」



「はぁ」


「今だって」「こわいよ」「なにもかもが」


「俺は俺を信じられなくて」「今日もこわくて」「さみしくて」



「もうすぐ」「ここを出ていくのが」「イヤ」



「……」「イヤだけど」「これは」「俺の願い」


「いつか」「たどり着きたいから」「お前らに見せたいから」


「最高のたのしい」「最高の世界」



「だから」「行かなくちゃ」「いけない」



「全然大丈夫じゃない」「大丈夫じゃないけど」「大丈夫」


「ダメなら」「帰ってきちゃえば」「良いんだもん」


「甘えて」「話して」「ひとやすみして」
「さみしいをはらい」「こわいを押しのけ」「また発って」
「そうやって」「がんばれるから」



「……」「ありがと」「おにいちゃん」「れむれむ先生」「お前ら」



「俺はやっと」「船を出せる」



「幸福なる」「現状維持を」「振り払い」


「帰る場所があるからこそ」「飛び立つ」


「この心」「等しく抱えて」



 ――ひとつ繋げよ、ここに握るは北の極星。

 ――ふたつ交わせよ、ここに開くは違わぬ回路。


「今度こそ」「行ってきます」



 ――届け、抜錨デイレアード



「これからも」「俺は」「きっと」
こわいを抱えて」「進むから」


「こんごともよろしく」「たのしいやつらっ!」




 ▼


「むぅ」「なんだか」「わかりづらいな」
「正直に」「喋ってみたけど」「なんだか」「次から次へと」「言葉が」「勝手に」
「順番が」「めちゃくちゃ」「表現も」「ごちゃごちゃ」
「……」
「まあ」「一応」「やるだけやったんだし」
「許せよ」「オーディエンス・・・・・・・

「俺は世界の種ワールドツリー」「テルル」「テル・メル」
「お前らのための」「舞台装置」
「脚本作りは」「専門外だ」「フ」

「まあ」「とりあえず」
「今後とも」「よろしく」
「……」

「ご清聴」「ありがと」「たのしいやつらっ!」

「……いるんだよな?」「お前らって」「先生の言葉からの」「仮説でしか」「ないが……」
「ま」「いないならいないで」「いつかの練習ってことで」「いっか!」
「さて」「ねよねよ」