RECORD

Eno.34 シャルティオの記録

【16 いのちのじかん】

 
 ダイナーで、寿命とかそんな話になった。
 ニーズはあと200年は余裕で生きるらしい?
 ルヴァールさんも長生きだろうね。
 にーさまも……長く生きそう?

「…………なら、僕は」


 自分の胸に手を当てた。
 この心臓は、今は確かに脈打っているけれど。

 知っている、知っているんだ、僕に時間がないこと。
 幼少期から、黄昏の主の足音を遠くに聞いていた。
 あぁ、長くは生きられないんだって、
 いつかこの蝕毒の魔法に喰われて死ぬんだって、分かってた。

 だからこそ、急がなくちゃ。
 魔導王国を良い方向に導かなくちゃ。

 生き急いでる? それはそう。
 僕がやろうとしていることは、
 本来ならば長い時間を掛けて
 やるべきことなんだけれど。

 だって、時間がないじゃないか。
 性急と言われても構わない、強引と言われても構わない。
 恐らく30歳まで生きられたら長く生きた方のこの命。
 出来るうちに、出来ることをしないと。

 だから婚約も早いうちに。
 僕が死ぬ前に子を残さなきゃ、魔導王国の未来は。

 母さんと兄上の囁く声が聞こえているんだ。
 『お前も早くこっちへ来い』なんてさ。

「…………」


 僕がこんな身体に生まれていなかったのなら、
 長く生きたその先を想像することも出来たのかな。

 そういう風に生まれたから仕方ないんだ、
 限られた時間を、有意義に使わないとね。









 長く生きられるみんなが、羨ましい、妬ましい。
 その時間を、僕にも頂戴よ。ねぇ。

 あぁ、でもそんなの、望んじゃいけないんだ。
 だって僕は、魔導王国の王様なんだから。



 穢らわしい気持ちに蓋をした。
 必死に“今”を生きて。生きて、生きて。



 ニーズたちのことは、
 確実に置いて逝くことになるんだろうなぁ。

「…………ごめんね」