RECORD

Eno.118 ルミア・ジーラの記録

昔の話(6)

『ルミア、どうして………』

「お兄ちゃん……お兄ちゃん………」

泣きじゃくりながらしがみつく私を、お兄ちゃんは呆然と見つめていた。


私には生まれつき、時間を巻き戻す特別な力があった。

友達が失くし物をしたと聞いた時は失くす前の時間まで戻り、
花瓶が落ちて割れた時はそれが落ちる直前まで戻って受けとめた。


神様からもらった魔法みたいな力。
お兄ちゃんのことも、死ぬ前に何とか止めたい。
でもどうしよう、どうすれば………

「お兄ちゃん………」

私は、自分の力のことは言わずにお兄ちゃんに今の暮らしを聞いた。
初めのうちは申し訳なさそうにしてたけれど、お兄ちゃんは少しずつ話を聞かせてくれた。

今の仕事が残業続きでずっと疲労が溜まっていくこと、上司の人に孤児院出身である
ことを理由に厳しく当たられたりすること、知らない街で暮らしていくことの辛さ。

『昔はこんな風じゃなかったみたいだけど……』

孤児院が紹介してくれた仕事場が悪かったというわけではなく、
昔と今では環境が変わっているみたいだった。

「お兄ちゃん、とりあえず……ご飯食べよう?
部屋の中も、私が片付けするから!」


私は、ひとまず自分にできることを精一杯することにした。

このままお兄ちゃんが疲れ果てて、自分から命を絶たないように。