RECORD
Eno.72 Rere Pia Goetheの記録
(5)――
今日も緑髪のエルフは、酒場で管を巻く。
時折見えない何かを探す様に、虚空を見定め溜息をつく。しかし別段不幸そうにするわけでもない。
そんな態度をしたら、クソの中のクソが寄って来るだけと思っているから。
”あいつ”はここにはいない。あの日あの時、右腕を喪った瞬間の姿のまま、……ぐちゃぐちゃになった世界を背景に嗤った顔が、記憶にこびりついて離れない。
掠れた呼吸。イロのない肌を伝う冷や汗。灰色の瞳は決して余裕のある眼差しをしてはいない。
インク色の体液が、辺りを汚す。
「お気になさらず。……決して、お気になさらずに、ね」
何処か申し訳なさそうに、しかし必死に口を動かしながら”あいつ”はただそう言って。
リリはこの世界に飛ばされた。
―――――――
”あいつ”が死んだのかも、何が悪かったのかも、分からない。
何も分からない。分からなかった。
この片目は未来を映すというのに、何も分かっていなかった。
本当にどうするのが最適だったのか、分かっていない。
そして今も、これから進む正しい道を、選びかねている。
時折見えない何かを探す様に、虚空を見定め溜息をつく。しかし別段不幸そうにするわけでもない。
そんな態度をしたら、クソの中のクソが寄って来るだけと思っているから。
”あいつ”はここにはいない。あの日あの時、右腕を喪った瞬間の姿のまま、……ぐちゃぐちゃになった世界を背景に嗤った顔が、記憶にこびりついて離れない。
掠れた呼吸。イロのない肌を伝う冷や汗。灰色の瞳は決して余裕のある眼差しをしてはいない。
インク色の体液が、辺りを汚す。
「お気になさらず。……決して、お気になさらずに、ね」
何処か申し訳なさそうに、しかし必死に口を動かしながら”あいつ”はただそう言って。
リリはこの世界に飛ばされた。
―――――――
”あいつ”が死んだのかも、何が悪かったのかも、分からない。
何も分からない。分からなかった。
この片目は未来を映すというのに、何も分かっていなかった。
本当にどうするのが最適だったのか、分かっていない。
そして今も、これから進む正しい道を、選びかねている。