RECORD

Eno.232 ユートゥルナ・カプリコルニュスの記録

海と闘技都市

――薫る潮風、響く潮騒。
懐かしさを感じる景色の中で、僕は呑気にたたずんでいた。

「ユートゥルナ~! こっちこっち!」


波止場に響くさざ波の音に混ざって、僕を呼ぶ声が聞こえる。
振り向けば、白く大きな翼と冴えるような青をした軽装の騎士が、僕に手を振っていた。
このひとが僕の先輩『ネージュ・コルウス』さん。
僕を『星騎士せいきし』の一員として歓迎してくれたひとだ。

「はっ……! すみません! 今行きますから!」


僕は自分の荷物を両手いっぱいに抱えて、ネージュさんの元へと駆け寄った。

星騎士せいきしは、機械的に再現された宇宙空間の中で、現実を侵食する怪物を倒す戦士たちのこと。
仮想空間とはいっても誰に作られたのか、何故存在するのかなど、その正体は未だ解明されていない。
現実の世界と同じ魔術が使えたりと不思議なことも多くて、あそこで起きる現象は僕の興味を惹きつけるものばかり。
初めて来た時はネージュさんや他の先輩さんたちに、あれこれ聞いて回るあまり呆れられたなあ。

これまで顔を合わせた星騎士の先輩たちは、今のところみんな親切で、良い人ばかり。
僕が来るなり早速大勢で囲まれて、僕の容姿をいっぱい褒められちゃった。
こういうのは、とっくの昔に慣れっこだけどね。

宿のチェックインやモノマキア闘技者登録とか、
ネージュさんはいろんな手続きを僕の代わりに軽々と済ませてくれた。
僕の荷物もいくつか持ってくれたし、正直頭が上がらない。

『モノマキア』っていうのは、ここフラウィウス・アレーナで定期的に開かれる競技のことだ。
古今東西、あらゆる武器による白兵戦を一試合につき五度の打ち合いによって行う。
使われる武器は本物だけど、試合中の闘技者の生命は常に保証されている。
モノマキアはフラウィウスの高度な魔術によって成立している、実戦の迫力を保ちながらも安全な競技だと、ネージュさんは説明してくれた。
この保護魔術に関してとても興味があるので、今度街の図書館に行って調べてみようと思う。

次は、僕たちが何故ここを訪れたのかを説明しようかな。