RECORD

Eno.118 ルミア・ジーラの記録

昔の話(9)

「お兄ちゃん………」

『ルミア……?どうしてここに………』

お兄ちゃんは不思議そうな目で私のことを見ている。
私にとってはもう何度目になるか分からないやり取り。


何て声をかけたらいいのか分からない。
お兄ちゃん、このままだと死んじゃうからどうか思いとどまって。
お仕事やめたっていい、命より大事なことなんてない。
孤児院のみんなも悲しむから。私も、お兄ちゃんがいなくなるのはイヤだ。


全部、全部、もう言葉は尽くしてきた。
だけど今度もきっと、結末は変わらない。


私は、今まで降り積もってきた感情があふれ出して、涙を流した。
困惑するお兄ちゃんの顔を見ることもできずに、ただただ泣きじゃくった。

そして、どうせお兄ちゃんが助からないなら、
自分もここで全てを終えようと。思ってしまった。

「お兄ちゃん………


私は……お兄ちゃんが好き………
世界中で、誰よりも何よりも………」


『ルミア…………』


最期に伝えたかったこと。ずっと言えなかったこと。
私はお兄ちゃんが好き。
これだけは伝えておきたかった。これさえ言えたら、あとはもう。


私はその日、お兄ちゃんと一緒にご飯を食べて、一緒に寝た。

人生で最後の日を、お兄ちゃんと過ごせて良かった。





~~~~~





翌日私は、お兄ちゃんが亡くなるのを見届けに行った。
しっかりと見届けて、自分も後を追おうと決めていた。


でも、奇跡はあっさりと起きた。


お兄ちゃんは、死ななかったのだ。
今まで身投げしていた川をしばらく眺め、そして仕事場へと歩いていった。

私はただ呆然と、それを見つめていた。
まだ実感は湧かない。でも………お兄ちゃんは、助かったんだ。


喜び、幸せ、何もかもで胸がいっぱいになりそうになった時、不意に背後で声がした。


【………ルミアさん。
変えて……しまったのですね。……天運を。】