RECORD

Eno.104 ネージュ・コルウスの記録

アレーナへただいま

ボクたちは久方ぶりにフラウィウス・アレーナを訪れた。
街の景色は相変わらずだが、涼しげな秋の風吹く前回とは異なり、
今は初夏の暖かな日差しがアレーナ特区の美しい海と都市を照らしている。

――さて、"ボクたち"と言ったけれど。今回のボクには連れがいる。
残念ながら、ボクの恋人のメリュジーナとデート……って訳ではなくてね。
それでも星騎士せいきしの一員であるボクにとっては、自分の使命に関わる重要な人物だ。

ボクが港で手を振って、その当人を呼びつける。

「ユートゥルナ~! こっちこっち!」

「はっ……! すみません! 今行きますから!」


その子は両手に大量の荷物を抱えて、慌てて走ってきた。
言ってくれたら、ボクも持ってあげるのに。

この子が『ユートゥルナ・ナシラ・カプリコルニュス』。
ボクが星騎士の任務で、とある場所から引き取ってきた新米星騎士だ。

星騎士というのは、電子の宇宙『アストラ』で現実を蝕む怪物を倒したりする一方で、
仮想空間で思い思いのセカンドライフを満喫する自由な戦士たちのことだ。


そんな星騎士の活動のひとつとして、新たな仲間の勧誘が常に行われている。
特に星と縁が深いか、元から星に由来する力を持つひとは星騎士の素質が高い。
ユートゥルナもそのひとりだ。縁あって、ボクが彼女……いや、彼だっけ?の師を務めることになった。

……え? 師匠なのに"彼"か"彼女"かわからないって?
ボクはあの子と会ってからまだ日も浅くて、本人から性別を見聞きしたことがない。
一見女の子に見えるけれど……観察していると意外と男勝りなところもあったし。
ひとの性別は見た目によらないところがある。ボクも昔は男に間違われるような格好をしていたものだ。
ま、とにかく可愛いからどっちでもいいか。


まずは宿のチェックインを済ませて、持ってきた荷物を整理する。
それからモノマキアの闘技者登録をして、シーズンパスの発行手続きをしておく。
ボクが前に買った分も、期限切れなので再発行になる。

あとは武器ライセンスの取得・更新の手続きだ。
ユートゥルナは一体どんな武器を使うつもりなのだろう?

膨大な魔力を持つユートゥルナは星騎士として活躍するなら魔術師が適していると、ボクも他の星騎士も同じような評価していた。
にもかかわらず……あの子は使用可能な魔術が制限され、白兵戦がメインコンテンツであるモノマキアにあえて挑もうとしている。
その理由を話すと少し長くなるので、今後追って説明することにしよう。


それと、ここに来る前から続けてきたことだが、ユートゥルナを弟子に迎えてから、あの子についての観察記録をつけることにしている。
秘密の多い後輩のこれからの成長が、今から楽しみだ。