RECORD
■■日目の自問自答
極めて物理的な、人除けのおまじない。
それを施してから――

「……確認、よし。」
再び、"皮袋"の中へと入る……
−−−
−−
−

「ああああなんでなんでなんで!!!どうして私がこんな目に遭わなきゃいけないの!!!リヒトは私に唯一優しく接してくれた人であんな地獄みたいな場所から引き出してくれたのに、彼じゃないと駄目なのに、彼がいないと生きていけなかったのに!!!私は嫌だった!!王国の復興も代わりの救済の役割も何もかもが嫌!!!首を括ってでも後を追いたかった!!!セナもアレルヤもズルい!!!!なんで私を置いていったのよ!!彼らが生き残るべきだったのに!私なんかよりも!!!どうして私が残らなきゃいけなかったの!一番!他の人なんて!どうでもいいと思えるろくでなしの私が!!!助けられるわけなんてないじゃないの!!!優しくなんかない寄り添えるわけがないいつも自分のことしか考えられなくて好きな人だけに頼らないと生きていけないこんなにも弱い私が!!!なんでなんでなんで私を奪わなかったのミハエル!!リヒトを奪うなら私も奪ってよ!!セナやアレルヤならきっとこんなことなんてしないでそれで区切れたかもしれないのに!!お前のせいでこの悲劇が生まれたのよ!!お前がいたからじゃない、お前が、私から、彼を、彼らを!奪ったから!!誰も!どうして!怒りを向けなかったのよ!!こんな悲劇が何度も何度も何度も繰り返されていたのを"仕方がなかった"で済ませられるの!?そんなわけないじゃないの!!私は嫌だった、済ませたくなかった!だから呪った、心を与えた、名前も!!一人の!!人間にするために!!そうしてずっと苦しめばよかった!!同じ痛みと苦しみを受けて欲しかった!!仕方がなくない!!私はそれを受けて欲しかったの!!この復讐が間違ってたなんて、思いたくないの!!!」
ガシャン、ッガシャン!
物が、破壊される。
手で、或いは、魔法で。
無残に、無情に、バラバラに。
狂ったように叫びながら女は、暴れた。
………
……
…

「ハァ、ハァ、ハァ………はぁ……」
…ひとしきり、叫び、暴れた後、後ろにバタリと倒れる。
今壊した物はもちろん、リンちゃんの私物ではなく、また"外"から持ち込んできたもの。とりあえず、何でもよくて、容量に制限がないのをいいことにあれこれと持ち込んだ。今はもう、全部が残骸と化している。

「……出るものね、怒りってまだ、こんなに…」
もう下火で、消えゆくものだと思っていたのに。
思い出せば思い出すほど、新鮮な怒りというのはいつでも沸かせられる。
この怒りに身を任せ、また、あの子を苦しめようと思えばきっと出来るだろう。

「………」
憎悪は、消えない。
その時のことを思い出せば、いつだってこうして怒り狂えるし、同時に、"まだ苦しい"と悲しみも込み上げてくる。
傷付けられた記憶ほど、都合よくは消せないのだ。意識して避けても、何かの拍子に思い出し、当時と同じように苦しんでしまう。呪いと同じ、与えられたらずっと、ずっと、ずぅっと、消せない。

「…でも、消し去ることが正しいとも、限らない…」
消したらきっと、"何か"が欠ける。気付かずとも、世界はそうなる。
だから、この怒りもまた、消すべきではないのだろう。

「………」
この怒りをまた、彼女にぶつけるべきだろうか。
もう少し、熟考しよう。時間はまだ、あるのだから。