RECORD

Eno.118 ルミア・ジーラの記録

昔の話(10)

シルクハットをかぶり、スーツを着た紳士風の男性がそこに立っていた。
男性と言ったけれど、顔は帽子に隠れてよく分からない。声が低いからそう思っただけ。

「誰……?あなた………」

【私たちは〈時計ウサギ〉。
人々の生きる時の流れ……〈天運〉を管理する者でございます】

「天運………?
一体何を言っているの……?」

私は突然現れた不審な男性に身構えた。
けれど、彼が懐から取り出したものを見てハッとした。


それは、私のものとよく似た懐中時計だった。

【あなたも覚えがあるでしょう。
これまでこの時計を使って時を遡り、周りで起きたことを変えてきたご経験があるはずです】

「……っ、それは………」

思わず口をつぐむ。
この人も、たぶん私と同じ……"特別な力"を持っている。

「私に何の用があって来たの………?!」

【あなたも、私たちと同じ〈時計ウサギ〉の一族なのです。
ですが本来変えるべきではない"人の命"という〈天運〉を変えてしまった。
一族としてその後始末をしなければなりません】

「あなたたちと、同じですって……?
何よそれ……!そんなの聞いてないわ!
第一、そんなに大変なことだったらもっと早く言いに来れば良かったじゃない!!」

【あなたは無数の時間遡行を繰り返した。
故に、私たちと言えどあなたの存在を正確に捕捉することが出来なかったのです】


一度に色んなことを言われて頭が混乱しそうになっている。
時計ウサギ……?時間の管理者……?私はただの、ルミアなのに。どうしてそんなこと……


「だからって、今になってのこのこ来るなんて………
後始末って、私をどうするの。あなたたちの決まりを勝手に破ったから殺しでもするつもり?」

【……いいえ。あなたの命を奪っても一度変わってしまった天運は戻りません。
私たちにとっても想定外の事態なのですが……これを修正するには、
あなたの存在をこの世界から抹消しなければならないかもしれません】

「え…………?」

抹消。
その言葉を聞いて、私は頭の中が真っ白になった。