RECORD

Eno.118 ルミア・ジーラの記録

昔の話(11)

「抹消って何よ………
結局殺すってことじゃない」

【そうではありません。どうかお話を聞いてください】

涙が止まらなかった。
私はただ、お兄ちゃんを助けたかっただけなのに。
どうして急に知らない人に運だの抹消だのなんて言われなきゃいけないの。


でも、本当は心の奥で思っていた。いつかこんな時が来るんじゃないかって。
私がもらった特別な力は、"特別"だからこそ"普通"じゃない。
子供の頃はささいなことにしか使ってなかったけど、その"ささいなこと"だって、
人の、物の運命を変えてしまうことだったんだ。

まして、死ぬはずだった人を生きさせるなんて。
そんなことをした私は、もう………


【死ぬわけではありません。あなたには全く別の世界の、別の存在になっていただく。
今のこの捻じ曲がってしまった世界から切り離すのです】

「別の存在……?どういうこと………?」

【言葉の通りです。いま私たちがいるこの国、この街、この場所とは異なるところ。
星も、次元も違う世界。違う時間が流れている場所です】

「私がそうすれば、お兄ちゃんは死なないままでいられるってこと……?」

【その通りです。】

「なんだ、簡単じゃない!!だったら別にいいわよ!
私がどっかに行くだけでお兄ちゃんが助かるなら、安いものだし!」

【話はそう単純ではありません。
この処置を行った場合、あなたは"お兄ちゃん"と呼ぶ人物の記憶を失くし、
おそらくこの世界にも二度と帰ってくることができなくなります】

「え……………?」


お兄ちゃんの、記憶がなくなる………?
それにこの世界にも戻ってこれなくなるなんて。
孤児院のみんなにも、もう会えなくなるってこと………?



【それだけではありません。
あなたは死ぬよりも辛い〈天運〉を背負うことになるかもしれないのです】