RECORD

Eno.118 ルミア・ジーラの記録

昔の話(12)

【あなたは、おそらくもう時を遡る力を使うことはできなくなります。
力を酷使し過ぎたのです。遊び過ぎた玩具おもちゃが壊れてしまうように。

それだけならばまだ良いのですが……
その壊れた力は、あなたの意志とは関係なく突然起きる可能性があります】

「つまり……どういうこと………?」

【あなたが別の世界に飛ばされ、そこで5年間生活をしたとします。
そこで不意に力が発動し、5年前に戻されたとしましょう。
あなたは再び戻った時間から生きることになります。

自分の力がコントロールできないままこれが繰り返された場合、どうなるかお分かりですか?
下手をすればあなたは歳を取らないまま、永遠に同じ時間を生き続けることになる】


永遠に同じ時間を生きる。おとぎ話みたいなお話。

「……………
壊れた力を直す方法はないの……?」

【残念ながら。
今この時点でもう一度時を遡り……男性の死を受け入れれば、捻じれた天運も元に戻って
あなたの力も正常化するかもしれませんが】

「それは絶対にイヤ!!せっかく助かったお兄ちゃんをまた殺すなんて!!」

【……そう仰ると思いました。
おそらく時間はあまり残されてはいません。
あなたにとっては辛いことばかりかもしれませんが………ご決断を。】


「……………分かったわ。」

私はうなずき、時計ウサギと名乗る男性に懐中時計を渡した。


目の前が真っ白な光に包まれた。



~~~~~



私は今、知らない街で暮らしている。

自分がどうしてこうなったのか、よく覚えていない。
大切な人がいた気がするけれど、思い出せない。
ただ故郷に帰れないという寂しい気持ちだけが残っている。

それでも、私は生き続ける。いつかあの場所に帰れる日を信じて。







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この記録を書いている私がどうしてお兄ちゃんのことを覚えているのか、
不思議に思っている人もいるだろうか。


私は、お兄ちゃんを救えなかった世界に生きているルミア。
星の数ほどある世界の可能性の中の一つの、存在。

お兄ちゃんを助けられなかった私は、"時計ウサギ"として
人々の"天運"を見守る側の人間となった。
人が、定められた運命の中できちんとその命を果たせるように。
世界が、時の流れが乱されないように、平穏であることを願って。


そんな私は、時の狭間でたまに"もう一人の私"を覗いている。

記憶を失くし、別の世界で生きることになった私。
踊り子として自分とは全く違う人生を生きている、「ルミア・ジーラ」という私。

彼女は、自分の意志とは関係なく突然違う世界、違う時間に飛ばされる。
永遠とも思えるような時の流れの中を彷徨いながら、それでも生き続けている。


私は彼女に手を差し伸べることはできない。それがどうしようもなく辛くなる時もある。
でも、それでも……あれはあの子が、あの時の私が選択したことだから。


お兄ちゃんが生きている世界を作ってくれて、ありがとう。
あなたがいつか、孤児院に帰れますように。お兄ちゃんのことを思い出せますように。