RECORD

Eno.54 アジュール・プリズムの記録

三十二基 初号機の帰還

 異世界渡航券を使って、でも、潜り抜ける事は困難だった。
 なんとか、なんとかこの世界に来れた。帰れた。
 信仰を喪い、疑念を覚え、長期不在だった己への、危機感はあれど。
 空を飛び、懐かしさに浸りながら、郷愁めいた想いが、胸中を満たす。

「……」


 違和感があった。
 糸の張られる感覚が、結んだ縁が一切ない。
 主様、先輩達……どれも、その糸が感じられない。まるで、最初から無かったかの様に。

 何故? どうして? と、疑問が頭を占める。
 一体、何故なのか。何が起きているのか?
 この感覚は? この違和感は? この胸騒ぎは!?
 世界に帰れた筈なのに、自分が知る世界とは異なっているような。

  ぐるぐる ぐるぐる ぐるぐる ぐるぐる

 ない心臓が、痛むような、そんな感覚がする。

 帰った先は、知らない会社が建っていた。
 カレンダーを見れば、50年前の春だった。
 家を、見たら、

「―――……」


 ランドセルを背負った少女が両親と手を繋いでいた。



 すべてを取り上げられた子供家族、仲間、家、組織、過去、自分、身体、縁、生、死は、ひとり、しくしくと、顔を覆うのでした。