RECORD

Eno.7  の記録

無題

 
身を蝕む呪いは無くなった。
いっとう心配していた彼女の身体は動くようになった。

まだ先を進むためのよすがが、縋る所が必要と言うのなら杖になれば良い。
羽ばたく為の止まり木として使えば良い。
そうして軈て救われるのなら、それで。

「…ただ、」



恐れるものと言えば
最近
という程でもなく少し前から。
怖い事が随分と少なくなった気がする。

人に踏み入られるのは触れられたく無いものまで毀損されそうで厭だったし怖かった、もうどうでもいい
人に触られるのは何をされるか分からないから怖気立ったし怖かった、もうどうでもいい
人に好意の類を向けた所で拒絶と裏切りの懸念と至らなさがずっとあったし怖かった、もうどうでもいい
人に悪意の類を向ける事自体避けたくて一度向ければやり過ぎた怖かった、もうどうでもいい

少し前までは、もっと別の感情で受け止めたり御したりしようとしていた気もするけど
情動なんて扱うだけ重さが勝る。不便だ。
いつから諦念と放棄しか見えなくなったかはもうよく分かっていない。何も無いところを見ている。
怖くないのは都合が良い。余計な事を考え込まずに済む。

ただ、ただ、ただ。

彼女が杖も必要無く前を見て歩けるようになったなら。
彼が自分との対談も探りを入れる事にも飽きたなら。
そうして大半の楔を取り払えたのなら。




……その時は、もういいかと思っている。
それまでは、どれだけ自分を適当に使おうと構わない。
無駄な心配を掛けさせないだけの、最低限だけ持っていればいい。私は要らない。



いつから死にたかったんだっけ死ぬまで誰にも言うな