RECORD

Eno.21 蒼崎 隼斗の記録

動物は揺れるものに目が行く

「………別に大きさなんかどうでもいい」

返答次第では尻尾ビンタや寸打も考えていた……けれど

「俺にとっては蝶蘭。お前の存在があればそれでいい」

クソデカクッションパッド下着を握ったままの手が宙に取り残されてしまった。
歴戦のカスから放たれた言葉なら、予定通り尻尾ビンタで良かったが……
相手はそういう事を考えてもこなかった始末屋。
人の温もりや感情を学習するところからスタートしたことを、おそらく誰より知っている。
……それはきっと、本人よりも。


テーブルの上に下着を置いて、向き直る。
反魂の宝玉が欲しいわけでもなく、美醜にも興味がなく、子供が欲しいわけでもない。
ただ一緒にいられればそれでいいというのは、『  』としか表現する言葉が見当たらなかった。

「……おまいさんは、本当に変わり者でありんすねぇ。
わっちを適当にだまくらかして宝玉を手にしんすれば、それで何処ででも食って行けんしょうに」

既に、今より贅沢を望むことが難しい程に成功しているからこそ
何も要らないという彼の言葉を、ずしりとした重さをもって感じられる。

「さて、……おまいさんがそう言いんするんなら、わっちも腹ァ括りんしょう。
わっちの体に眠る、反魂の宝玉を……いつの日か無効化し
赤子返りも封じんして……おまいさんと一緒に生きて、幸せに死んでいきんしょう。
そん時は、隣に埋めてくんなんし」

そんな人生なら、養父母も、実の両親も、きっと納得する。
誰より自分が、納得した。