RECORD

Eno.48 Siana Lanusの記録

◇73



夢を見た。



私はあの時死ぬはずだったのだ。
少なくとも創壁神はそのように運命を描いていたはずだ。
生き延びてしまって、けれども創壁神は私を殺しはしなかった。
生きていようと死んでいようと、どうでもよかったのだろう。
私は与えられた役目を終えたから、その後はどうでもよかったのだろう。

まるで自分のこの先を見棄てられているようで恐ろしい。
好きにすればいいのだろうとは思うし、きっと都合はいいのだろうけど、
神に見放されているという事実は、ひどく、おそろしい。
何も障害にならないと、何も成せないのだと、言われているようでもあった。
死んでもいい理由だった。

意志を通した先に大海がある。
流れ着いた先に救いがある。
その教えだって、“創壁神が創り出した精霊”が述べたことだ。
私達の負けが予定調和で、私達の意志は通らないものとされてたなら、
その言葉だって、信じていいものなのか。疑ってしまう。
死んでしまいたい理由だった。

水源の意志を疑うことは、今までの自分を疑うことで
今までの自分の言葉と行動をすべからく否定することでもあった。
自分の言葉を、意志を、感情を、すべて、否定することであって、
たまらなく苦しい。肯定してくれる人の言葉すらも、否定することになって。
私に望んでくれるひとに、できることが、なにもなくて。
死にたいのだ。ずっと、望んでいるのだ。
自分を愛せる要素がなにひとつなかった。




──ひとに縋ってまで立たなきゃいけない理由はあっただろうか。
──ひとを縛ってまで歩かなきゃいけない理由はあっただろうか。

     生きていたい理由が思い出せない。


水源の意志を通すために、生きていなければならない。
水源の意志を無意味にしないために、生きていなければ。
それを無意味にしない事は、私にしか出来ない。
もう意志を継いで進んでくれてる人がいるのなら、自分はもういいのでは?
そう思って無いと、保てない。疑いながらも、水源の意志を信じなければ。
たとえ本当に水源の意志に意味がなくても、それに縋らなければ。
生きなければならない、今にも切れそうな理由だった。

生きる事を望まれてるのは、今までの私だろ。
折れたらもう、望まれるだけの価値のあるものじゃない。
生きていたい理由にならない。
独りでは流れられない。分かってる、分かってはいるんだ。


祈ったところで道は見えない。