RECORD
Eno.119 イオリの記録

──初めてその刃を見たのは、いつ頃のことだったか。
父は昔から穏やかな人だった。
家族のことが大好きで、母のことが大好きな、普通の人。
好奇心で、父の仕事を聞いたことがある。
父は「行商人の護衛や魔物討伐をしている」のだと母は言った。
穏やかな笑みを携える父が武器を振るって戦う姿を、自分は想像できなかった。
背丈が伸びて、翼で飛べるようになったころ。
父の仕事についていきたいと頼み込んだことがあった。
いくつかの条件と共に、父はそれを許してくれた。
荷台に積みこむときに、ほんの少しだけ父の刀を持った。
思っていたよりずっと重くて、取り落としそうになった。
行商人の荷台に乗せてもらって、二つ向こうの町まで揺られていた。
辺りを見回しながらも僕を気遣う父の姿は、いつもより少し凛々しく見えた。
森の中を進んでいた時、大きな魔物が数匹現れた。
涎を垂らし、狂暴な牙をのぞかせる魔物に僕は情けなくも震えあがってしまって。
縮こまる僕の頭を父は撫でて

瞬きの間に、ばっさりと魔物の群れを切り伏せて見せた。
上着を翻して刀を振るう父の姿は、まるで舞でも踊るようで。
銀色の刀身に反射する光がとても綺麗で。
穏やかな父が刀を振るう姿は、凛々しさと誇らしさに満ちていた。
僕はすっかり見惚れてしまって、口を開けたまま見ていることしかできなかった。
そんな僕の姿を見ておろおろと心配する父の姿は、家庭での姿そのもので。
緊張が解けてほっとした記憶がある。
その背に追いつきたくて体を鍛え始めた。
いつの間にかサチも合流して、お互いに木刀で手合わせをしたものだ。
両親の背を追い越して、成人の齢を迎えても。
あの父の背中は、まだ遠い。
刀の始まり

──初めてその刃を見たのは、いつ頃のことだったか。
父は昔から穏やかな人だった。
家族のことが大好きで、母のことが大好きな、普通の人。
好奇心で、父の仕事を聞いたことがある。
父は「行商人の護衛や魔物討伐をしている」のだと母は言った。
穏やかな笑みを携える父が武器を振るって戦う姿を、自分は想像できなかった。
背丈が伸びて、翼で飛べるようになったころ。
父の仕事についていきたいと頼み込んだことがあった。
いくつかの条件と共に、父はそれを許してくれた。
荷台に積みこむときに、ほんの少しだけ父の刀を持った。
思っていたよりずっと重くて、取り落としそうになった。
行商人の荷台に乗せてもらって、二つ向こうの町まで揺られていた。
辺りを見回しながらも僕を気遣う父の姿は、いつもより少し凛々しく見えた。
森の中を進んでいた時、大きな魔物が数匹現れた。
涎を垂らし、狂暴な牙をのぞかせる魔物に僕は情けなくも震えあがってしまって。
縮こまる僕の頭を父は撫でて

瞬きの間に、ばっさりと魔物の群れを切り伏せて見せた。
上着を翻して刀を振るう父の姿は、まるで舞でも踊るようで。
銀色の刀身に反射する光がとても綺麗で。
穏やかな父が刀を振るう姿は、凛々しさと誇らしさに満ちていた。
僕はすっかり見惚れてしまって、口を開けたまま見ていることしかできなかった。
そんな僕の姿を見ておろおろと心配する父の姿は、家庭での姿そのもので。
緊張が解けてほっとした記憶がある。
その背に追いつきたくて体を鍛え始めた。
いつの間にかサチも合流して、お互いに木刀で手合わせをしたものだ。
両親の背を追い越して、成人の齢を迎えても。
あの父の背中は、まだ遠い。