RECORD

Eno.395 ファリーダの記録

少し先のお話

これは少し先のお話。
結晶竜がどうなったかのお話。

ここを見ている人にだけこっそりと教えられるお話。

「忘れ物……ないですかね?」



シンイリのパンケーキ、ルービックキューブに凍った新聞紙。
身に付けられなくても、結晶化すれば結晶竜の一部として認識されるかもしれない。

「りぼんとぶれすれっと、お守りは身に着けていた方が確実に持って帰れるはずです」



世界を飛ぶという事はそういう事だと、少しだけ知っているから。

「ボクの記憶は、どうなるですかね……」



忘れたくない思い、想い。
忘れたくない大切なひと達。
忘れたくない約束。
……忘れたくない。

シプレの香りをまとって。
時空の扉を開く。

「この部屋も色々な思い出が出来ましたね」



一度部屋を見渡して、手を振る。
何に?

時空の扉に足を踏み入れる。
大切な思い出たちと一緒に。

大丈夫、きっと大丈夫。
願ってくれたひとがいる、約束をくれたひとがいる。
さよならだけれど、またねと言ってくれたひとがいる。
だから、大丈夫……。

……世界が……しろくなる。
だめ、渡さない……この想いはわたさない。

「世界よ、受け入れなさい!結晶竜としてのボクではなくファリーダを!」







見覚えのある社。

「ボクは……何を……して?」



揺れる白いリボン、光る翠のお守り、赤い星が浮かぶブレスレット。
自分のまわりには結晶化された品々。

「……これは?えっと」



風が吹く。
一番身近だったシプレが香る。

あぁ、そうだ……。
香りが呼び覚ます。
紐付けられた様に、記憶の扉が一つずつ開いていく。

大切な記憶達、あの場所で知った想い達。
忘れていない、失っていない。


世界はボクという存在ファリーダを許してくれた。

「ほら、やっぱり世界は優しいのですよ」