RECORD

Eno.263 ユビアサグラーダの記録

ゆめのはて

「なぜ」



「なぜ──こうなってしまったのでしょうね」



「いえ……わかっている、つもりなのです。
もうとっくに、私の護るべき方々は、死んでおりますのに」


「それなのに、それなのに、止まれませんでした」


「止まったら……今までの全部、間違いになってしまう気がして、もう求められもしないのに、屍に富を集めて」


「……いえ…そうでなくとももう、間違っていたことになる・・のでしょうね。
魔王は、悪であるから…行いの全ては、過ちであるのだから…」



「……願い、祈り、信仰、本性…。それらは悪行の前に顧みられないのだからどうでもよいのだから…………」



「……報いなのでしょうね。
…ああ…大丈夫、傷つかないでください。私はこれで良いのです。
……御二方が知ってくれたこと、それですら過ぎた幸せです」


「……ふふ!なんと優しい方でしょう。
…でもね、これは悪いことばかりではありません」



魔王わたしという悪があれども、皆私のことを知らない。私が、何ができたのかを知らない。
ただ、強大であっただけを知る」


「……皆、恐れているのです。恐れは、時に理由となりましょう」


「大きな樹が倒れる時…ただ無闇に切れば、下手人は露見するでしょう?
しかし、内が腐れていると知れれば…勝手に倒れたと、疑うものはおりますまい」



「私は、魔王エル・アグラ。
お二人に、私の名を託します……私を、全ての悪の、滅ぼされるべき理由となさいませ」


「……どう使うか、もう検討は着いたようで。
ええ、優しい上に、聡い方。
私と同じ、愛のために、悪鬼羅刹に成れる方」





「……ねえ、勇者様」




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魔王エル・アグラ。

魔王城と周辺国家では呼称される、旧南ベルベド領主城にて発見。
喰らったものを『良化』して再生成できる亜人であることを突き止めるまで二ヶ月、城周辺での『餌』兼『兵』の魔族に毒の仕込みを済ませるまでに五ヶ月、新たなる『兵』の生産が止まったことを確認し、既存の魔族が消費し切られるまでに六ヶ月が経過。
仕込みの毒で消化器官を無力化済みと判断し、侵入。城内大広間で餓死寸前の対象を発見、まもなく死亡を確認。