RECORD

Eno.253 クァリの記録

我儘




「……」


星の下。軽くなった薬莢。

冷静になる。
 ――自分が異世界へ渡れないのに、あの人はどうやって来るのだろうか
冷静になる。
 ――来れたとして、帰る手段はあるのだろうか
冷静になる。
 ――帰れなかったら、この世界で暮らす事になるのだろうか

「────────」


もしかしたら。もしかしないで。
私はとんでもない事をした?

会いたいと思った。そばにいてほしいと思った。
声が聞きたかった。触れてほしかった。
自分の我儘が、叶ってほしい気持ちと、叶わないでほしい気持ちが、存在していた。




六秒。
子供には、ひどく、長く感じる六秒。
縁が、糸のように張られた感覚がした。

「────……」


金属音が地面に落ちる音。
足元に落ちるひとの影に、顔を上げる。

「……、…………」

[あなた] がいた

確かな輪郭を持った[あなた]が私の前にいて、
性別や年齢を感じさせない声で[異世界の言語]を話している。
[ライフル]の捻じれが、ここに来るまでに何があったのか。


想像できないほど、無知な子供じゃなかった。

「……」


あなたが何を言っているのか、分からなかったけれど。
煙草の灰のように落ちた右腕が、いつかの路地のやり取りを思い出す。
僅かの沈黙と、誤魔化すみたいに笑いながら、話すあなたの姿は、







そばにいて




黄金の祝福を得た子供の身体は、輪郭も、重さも、体温も、確かに在りました。
生きていました。生きています。