RECORD
薄翅:Ⅷ
「リベレ、あのね……」
「改まって、なんですか?」

少女から、話をして欲しい、と頼まれた。
僕のいた元の世界のこと、彼女の物語との共通点、
僕がフィクションから来たのかもしれないこと。
店長に打ち明けるべきだと。
「どうして……?」
「どうしてじゃないってば。
いつもそうやって自己完結するんだから。
私たちの事情、お世話になってるんだから
しっかり伝えた方がいいよ」
「でも、あなたが小説を書いていることは──」
「いいの! ……頑張りたいことになったから。いい機会だよ。
だから……お願い」
***
「ンだよ、真面目な顔して」
店長は、要領の得ない僕たちの話を辛抱強く聞いてくれた。
「わかってくれました……?」
「テメェの父親の趣味が気持ち悪いって話まではな……」
「すみません、店長みたいな姿の美少女アバターは
あの世界結構安売りされてるんです」
「前から思ってたけどアタシにだけは
無礼を働いていいと思ってんだろ!」
「……ったく、ガキどもだけでコソコソしてると思ったら、
変な空想の話で盛り上がってたってわけ」
「リベレ、実家で親御さんにちゃんと挨拶して来い。
ちょうどシーズンが終われば夏休みだろ」
「話聞いてました!?
その実家も存在が怪しいと……」
「リベレは本当に、そこの妄想少女のためだけに
自分が生まれ、ここに導かれたと思ってやがんのか?
……それこそ、元の世界に、お前自身に失礼だとは思わねえのか?」
「……」
「そのゴーグル。テメェの持ち込みだったな。
まだ異世界の魔力が残ってる。
渡航券を準備しとけよ」
「ほら、話してよかったでしょ」
「あ、あなたは、こうなると思って……?」
「半分くらいはね。
だって私の構想ではあの話は全宇宙を巻き込んだ
スペースオペラに発展して主人公も最終的には
巨大ロボットに乗り込んで月を穿つ予定だから
全然リベレとは違うでしょ」
「あの冒頭からどうしたらそうなるんですか!」
「それに、実家に帰ったって、この姿だし……。
親に会わせる顔なんて」
「会えるんだったら、会えるうちに会っておこうよ。
……私は記憶がなくてわからないけど、
きっとその方がいいと思う」
「……あなたがそういうことを言うのは、ずるいですよ……」
嘘ではなかった。偽物ではなかった。
複雑な気持ちと、安堵と。色々ありはするけれど。
かくして。
僕は実家に一度、帰省することになった。