RECORD

Eno.276 リベレの記録

薄翅:Ⅹ(終)

闘技の季節も、区切りが近づいていた。
僕はすぐに帰省するわけじゃない。オフの間もしたいことはあるし……。
それでも、終わりが来るということには寂しさを感じる。
ひとつひとつの試合にも、気合が入るというものだ。
……バイト先の皆が、応援に来てくれるというので挨拶をした。

「わあ〜! 私初めて闘技場に来たよ!
 すごく賑わってるね。
 シーズンが終わる前に来れてよかった〜」


「体調が安定してきて、よかったですね」


「待って、興奮して鼻血出そう」


「……本当に大丈夫ですか?」


「ま、なんとかなンだろ。
 リベレ、せいぜい頑張んな。テメェには賭けてないけどよ」


「身内票になるからでしょ。
 店長をボロ負けさせてきますので、ご期待ください」


「言うようになったじゃん」


「応援してるね!」



やがて、白い外套を身に纏って、試合の合図と共に歩を進めて。

「……ルールがある。敬意がある。
 なら僕のすべきことは一つ」



円形闘技場の、ありとあらゆる方向から。
歓声が上がる。闘いを待ち望む声が、輝きを見たいと湧き上がる声が。
頑張れ、と。あの少女が声を振り絞るのが聞こえる。
大丈夫、ちゃんと届いてる。僕に向けられる視線も、声援も、何もかも。

どんな容姿でも、どう見られようと。
僕は僕自身にとってのヒーローになりたい。
その生き方を証明してみせる。
挑み続ける。尊敬する闘士たちへ。

本物になってみせる。
誰よりも、優秀な闘技者グラディエーターに。



だから、槍よ届け。
もっと高く、もっと遠くへ。