RECORD

Eno.281 埋火のグラディアドールの記録

調査記録.9 ベルナールド

タインカールに手を出しかけた時点で、
私は最早自死するほかないと思っていた。

だが、再び彼の故郷で再会する約束をした以上、
そういうわけにもいかなくなった。

私は、調停者を辞した。ナハネアウローラはついぞ救えず、
出来た事と言えば、リンドロンドの手助けと、
プリムラ・マーメルクリアを送る手助け程度。
ベルナールドの名を冠するにはあまりにも不甲斐ない結果だ。

それでも私は生きる。生きる限り、生活は続く。
タインカールの国へ行かねばならない。
リンドロンド……ユビアサグラーダの伝承を後世へ伝えなければ。
迷い、よろめき、後退し、打ちひしがれても、
我々人も竜も、須臾を懸命に生きるほかないという点においては同類なのだ。

ナハネアウローラは、ついぞ理解を示さなかったようだがな。
生ける神など、存在しないという事を。
ルルベル・シャンパーニュには随分と悪いことをした。

エルノアウローラは母アムニアストゥーラと共に行くらしい。
せめてもの罪滅ぼしのつもりなのだろう。
奴も奴なりに成長し、生きる路を見つけたようだ。

痛みと痛みを取り換え、我々はあまりに多くを喪った。
だがこのフラウィウスでの出来事は、決して無駄などではなかった。
例え焦土と化そうと、埋火を歩くのが剣闘士グラディアドール

私は、そのように生きようと思った。