RECORD

Eno.877 フルールの記録

1:鏡の国より ≪2≫

「あ、あの…ボク・・の声、聞こえて…というか、姿が…」



その、人様ひとさまは。
幼い年齢に分類されるような背丈と声をしており。
真っ白い服に、茶色の髪。
ふわ、ふわ、と。蝶のようなものが傍を飛んでいる…

「…あのぉ…」


「…えっと、はい、聞こえてます、が…」


「見えては?」


「……いますよ?」



はっきり見えるし、聞こえる。
それは、当たり前のことでは…?と首を傾げていると…

うわぁ~~~ん!!よかったですぅ~~~!!
これがボク・・の生み出した幻覚か何かだったらもう色々と手遅れで…!」


「・・・」



どうやら私は幻覚認定されていたらしい。
なんだか腑に落ちないな…と思いつつ、今度は私から彼女に尋ねる。

「あの、貴方は一体…誰でしょうか?」


「…ハッ」



そう尋ねると、こほん、とわざとらしい咳払い。

「…は、天使です。」


「天使」


「はい、あるものを探しに神様から遣わされた天使なのです。」



今度は\えっへん/と言いそうな感じに、胸を張る。
…天使、にしては、白い翼や円形の輝きは見えないけれど…
あのシマでも、あの方はそういった"天使"だったから、偏見はよくないかもしれない。


「そうですか、私は…えっと、フルールと言います。」


「フルールというのですね!可愛いウサギさんですねっ」


「…ありがとうございます。それで、天使さま…ここは一体?」



天使がいるならば、所謂"天界"とやらだろうか?

「ここは、…そうですね、次元の狭間…のような、場所です。
様々な世界が繋がっていて、その通り道…の、1つがここです。
人によっては狭間を介さずとも異世界に移動出来たり、私みたいに鏡を通ったりしなくとも…
う~ん、暗かったり…海だったり…色々です!」


色々



色々らしい。とにかく、私が想像した天界はハズレだった。

「…それで、何を探していたのですか?」


「えっと、≪災厄レッドドラゴン≫です!
コレは、神様が生み出した大事な舞台装置でして…
私たちの世界では、始まりの時からあったのですが、
ある時から突然、いなくなってしまって…」


「…」



災厄レッドドラゴン
想像がつかないが、大事な物だから探すのは当たり前だとは分かる。

「それで、私は異世界へと飛んで探し回ったのですが…
…まぁ、その…簡単に見つかるわけがなくてぇ…



その悲壮と哀愁に満ちた姿から、とても難航していると分かる・・・

「私たちは天使だから…当然のように人間から見えない・・・・・・・・ですし…
頑張って話しかけてみても、空耳だと思われて無視されますし…
異世界の魔物は、人間の姿をしてる私を避けてしまいますし…
そうして巡り巡っていくつだったか…はは…



白い・・・

…心中、お察しします…



そういう言葉しか、出てこず…
そして、ふと、ある疑問を天使さまへと投げた。

「その、"レッドドラゴン"というのは、私の…私が、いた世界にはいなかったのですか?」


はい…探したのですが、全然…



スタンダム様が話すには、多種族を受け入れてる世界だから。
それこそ、≪災厄レッドドラゴン≫が紛れ込んでいる可能性があるかもしれない…と思った。
しかしこの落ち込みようからして、彼女の言葉は本当なのだろう。

「…だから、私だけじゃ探せないと思って…呼びかけたんです。
迷惑だとは、その…思ってますが…」


「…私に?」


「フルール…さん、というより、誰でもいいから、助けて欲しかったんです…
このまま、神様の元へ帰るわけにはいかず…かといって…」


「…」


「神様の悲しそうな顔を、これ以上見ていられなくて…」



そう言って、天使さまは顔を俯かせた。

「…うーん…」



よほど、大事な物で。悲しそうな顔を思い浮かべて、悲しそうな顔をする天使さま。
その心境は、分からなくもない。私だって頼られて、期待に応えられず悲しそうな顔をされるくらいなら…

「…あの、」


「…」


「よかったら、手伝いましょうか?」


「えっ」


「ドラゴン探し、手伝いますよ。」


「…えっ??



我ながら、本当にお人好しだなと自覚しつつ。
面倒な私に突っ込んでくるどこかの探偵さんのように。
すっかり、元の世界に帰る選択肢を棄ててしまっていたのだった。