RECORD
1:鏡の国より ≪2≫

「あ、あの…ボクの声、聞こえて…というか、姿が…」
その、人様は。
幼い年齢に分類されるような背丈と声をしており。
真っ白い服に、茶色の髪。
ふわ、ふわ、と。蝶のようなものが傍を飛んでいる…

「…あのぉ…」
「…えっと、はい、聞こえてます、が…」

「見えては?」
「……いますよ?」
はっきり見えるし、聞こえる。
それは、当たり前のことでは…?と首を傾げていると…

「うわぁ~~~ん!!よかったですぅ~~~!!
これがボクの生み出した幻覚か何かだったらもう色々と手遅れで…!」
「・・・」
どうやら私は幻覚認定されていたらしい。
なんだか腑に落ちないな…と思いつつ、今度は私から彼女に尋ねる。
「あの、貴方は一体…誰でしょうか?」

「…ハッ」
そう尋ねると、こほん、とわざとらしい咳払い。

「…私は、天使です。」

「天使」

「はい、あるものを探しに神様から遣わされた天使なのです。」
今度は\えっへん/と言いそうな感じに、胸を張る。
…天使、にしては、白い翼や円形の輝きは見えないけれど…
あのシマでも、あの方はそういった"天使"だったから、偏見はよくないかもしれない。
「そうですか、私は…えっと、フルールと言います。」

「フルールというのですね!可愛いウサギさんですねっ」
「…ありがとうございます。それで、天使さま…ここは一体?」
天使がいるならば、所謂"天界"とやらだろうか?

「ここは、…そうですね、次元の狭間…のような、場所です。
様々な世界が繋がっていて、その通り道…の、1つがここです。
人によっては狭間を介さずとも異世界に移動出来たり、私みたいに鏡を通ったりしなくとも…
う~ん、暗かったり…海だったり…色々です!」
「色々」
色々らしい。とにかく、私が想像した天界はハズレだった。
「…それで、何を探していたのですか?」

「えっと、≪災厄≫です!
コレは、神様が生み出した大事な舞台装置でして…
私たちの世界では、始まりの時からあったのですが、
ある時から突然、いなくなってしまって…」
「…」
≪災厄≫
想像がつかないが、大事な物だから探すのは当たり前だとは分かる。

「それで、私は異世界へと飛んで探し回ったのですが…
…まぁ、その…簡単に見つかるわけがなくてぇ…」
その悲壮と哀愁に満ちた姿から、とても難航していると分かる・・・

「私たちは天使だから…当然のように人間から見えないですし…
頑張って話しかけてみても、空耳だと思われて無視されますし…
異世界の魔物は、人間の姿をしてる私を避けてしまいますし…
そうして巡り巡っていくつだったか…はは…」
白い・・・
「…心中、お察しします…」
そういう言葉しか、出てこず…
そして、ふと、ある疑問を天使さまへと投げた。

「その、"レッドドラゴン"というのは、私の…私が、いた世界にはいなかったのですか?」

「はい…探したのですが、全然…」
スタンダム様が話すには、多種族を受け入れてる世界だから。
それこそ、≪災厄≫が紛れ込んでいる可能性があるかもしれない…と思った。
しかしこの落ち込みようからして、彼女の言葉は本当なのだろう。

「…だから、私だけじゃ探せないと思って…呼びかけたんです。
迷惑だとは、その…思ってますが…」
「…私に?」

「フルール…さん、というより、誰でもいいから、助けて欲しかったんです…
このまま、神様の元へ帰るわけにはいかず…かといって…」

「…」

「神様の悲しそうな顔を、これ以上見ていられなくて…」
そう言って、天使さまは顔を俯かせた。
「…うーん…」
よほど、大事な物で。悲しそうな顔を思い浮かべて、悲しそうな顔をする天使さま。
その心境は、分からなくもない。私だって頼られて、期待に応えられず悲しそうな顔をされるくらいなら…

「…あの、」

「…」
「よかったら、手伝いましょうか?」

「えっ」
「ドラゴン探し、手伝いますよ。」

「…えっ??」
我ながら、本当にお人好しだなと自覚しつつ。
面倒な私に突っ込んでくるどこかの探偵さんのように。
すっかり、元の世界に帰る選択肢を棄ててしまっていたのだった。