RECORD

Eno.873 Feher Istvanの記録

東京都x区

吸血鬼とは根本的に人と共存のできない種である。人の血を啜る行為は自然、多くは人にとっての死を伴う。
というか生かしておく意味もなし。


人は徒党を組むと厄介だ。そのような進化を遂げてきただけはある。
そうやって発展してきた。そうやって繁栄してきた。生存戦略、否定はするまいよ。

とはいえ、例外はある。大いにある。
つまり“単体で強い”人類。
ああいや、そこまで“外れて”しまった存在をヒトと定義するのかは一旦置いておこう。
少なくともヒトとして産まれた、ヒトの中で生きてきた、人間ひとのことして。

俺の住むエリアではそういった“外れ者”も多い。
単に安全でない治安が悪いが為に、そうでない存在が淘汰されていくという側面も大きいが。
x区ここでは人間は徒党を組むことはほぼない。そうしたとて意味がないから。
代わりに適応できないものは容赦なく淘汰されてゆく、圧倒的個人主義の街だ。
弱肉強食、適者生存。
だからこそ自身の存在が許容されている、とも。

ここでは人が消えても誰ひとり気にもかけない。
流石に死体が上がれば身元の同定くらいはするのかもしれんが、それだって死肉食のバケモンに漁られていなければの話。

常識的に考えてありえない事象がなぜか許容されている・・・・・・・・・・。x区には元よりそのような雰囲気がある。
ある種認識災害めいたものか。

人の十や二十が消えたとて、数多ある行方不明者のひとつとして数えられてしまう。
はて年に何名の人間がx区に食われて消えたのだろうな。日常茶飯事的に人が消えていく街で、そんなものはいちいち計量されない。

人間ヒトには過酷な環境なれど、故郷を追われた自分にとって居心地は悪くなかった。