RECORD

Eno.883 ハイドラの記録

空腹ということ

名前:■■ ■■
年齢:当時13歳(現22歳)
性別:男
罪状:遺失物横領罪(器物損壊罪、死体損壊罪)

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「これだからよぉ……」
綺麗に片付いた路地の先を確認して、年嵩の刑事は溜息をついた。
「何もないですね……血の跡くらいで」
先に踏み込んでそこらを調べていた、部下と思われる刑事が呟いた。

人が死んでいる、と通報があり、駆け付けた先にはそんな光景が広がっていた。
なにもない。ただ、アスファルトに染み込んだ血と思しき黒々とした染みだけが目視で確認できる程度。
普段その場にあると思われる積み上がった木箱やゴミ箱すら、綺麗になくなっていた。
道のみ。道と、左右の建物のみがあった。

「本当に、こんなことを一人の人間が?」
「俺だって未だに信じられねぇが……カメラ見りゃわかる。ちょっと位置が悪いんだけどなここは…」
溜息は尽きない。
湿った風の中に混じる血の匂いが、確かにこの場で何かが起こったのだと告げている、のだが。

なにか、は。もうなにもない。

「シデムシめ」
「今年に入って、もう何件目ですか、『行方不明にされた人』は」
「その中の何人がこうして消えたんだろうな。定かじゃねぇが」

「あ」「先輩、やられました」
「どうした?」
「カメラ、齧られてます」
「おいおいおい………そこまで気が回るようになったのかよ……」

この国、この街。決して治安が悪いとは言わないような街であった。
それも、一年前までのこと。

「……13歳の少年、が、こんなことしてるんですか」
「その証拠すらねぇんだよ」


ただただ路地に、何度目かの溜息が満ちるだけであった。