RECORD
Record:レピドライト:7
「ま〜〜でもしょうがないよねえ!」
「あたしたちは星にとって害でしかない」
「星に暮らす人にとっての異物」
「そして、星の運営者である我らが5柱にとっての異物!!」
それなのに多少の猶予と命を与えられて。
狂うまでは育てられるなんて、なんて慈悲あるかな!
あたしは正直おかしくなってんだろうが、最長の歳まで生かしてもらえている。
ああ、なんて慈悲あるかな!!
あるでしょう。慈悲。
◆
あたしはおかしくなるまでを見計らわれた実験台であると自己定義を持って明日に対して中指を立てた。
でもその中指は容易くおられている。
人間扱いされていなかったわけではない。
マザーは全ての人間が、人間的生活を送れることを祈っているのだと信じている。
だってマザーの選んだ人間たちは私に優しかったじゃないか。
優しかったけれど、愛玩品だったじゃないか!
わからない、別にそうじゃなかったのかも知れない。
私に不自由は何もなく、ただ幸福な部屋に暮らしを貢がれていた。
一枚壁隔たれて、交流と会話は行われている。
それはごく一般的コミュニケーションであり、私は組織の一部として存在していることは確かだった。
私には確かな居場所がある。
ファーネイという知り合いがいて、彼はよくこの牢を見にきたのだ。
彼は幼少の頃から間違えることなく、正しく『Belka/Strelka』の手駒であった。
ああでも、てんで悪い奴ではないんだよ。
公平で、平坦な男だった。
「敬遠なる中央都市セレシオンの市民よ」
「今日も『Belka/Strelka』の元に平和たれ」
にこやかに笑って、それが全てであると理解をしながら高らかに宣誓する。
何も悪意あることは起こさず、悪いことは何も行えない。
それは『Belka/Strelka』の作り上げる街において禁忌である。
我ら人は種の存続を行わなければいけない。
遠き昔、我らは争いの元に分裂していた。
境目をなくせ。不和を産むな。
しかし人間というのはどうしたって繰り返すバグがある。
これは愚かさではない。そういう生き物であるという諦めである。
『Belka/Strelka』はその野蛮を修正し、取り仕切ることでよりよくあれと願っている。
大昔の大災害があったからこそ、人類はさらなる飛躍と進化の果てに到達したのだと。
ファーネイはあたしとよく話した。
いいやつだったんだと思う。いいやつだった。
ああ、だから、どうしようもなく冷淡だ。
星の声を聞いていても、それは君に対する罰なのだと。
君が生まれてきた不幸の裏返しであり、致し方ないことだから、『Belka/Strelka』に祈りを捧げ、次のステージを望むのが正しきことだと。
「大丈夫、きみのことは俺は好きだよ」
「直談判して、受け入れてもらった。君が俳優として世界に役立つことを」
「その前に、きみが負けないように、正気でいられるように見つめていてあげよう」
「おかしくなる前に叩いてあげたら、多少気も保てるだろうから、大丈夫だよ」
「一緒に生きよう、ダリア」
「………」
「『Belka/Strelka』が全てなんだ!!!」
「こうしてあたしは耐え抜きました。まー、どっかかんかおかしくなってんのかもな」
「でも歌声は絶好調〜!!!」
たちまちに風を呼び起こして、何もかもを吹き飛ばすから。
私は、敵側の裏切り者の役らしい〜。
やだ 「……」 「馬鹿な幼い夢を話さないでよ、アホだな〜」 「そんなたいそれたことできるわけないじゃん!!!!」 「………」 「……じゃあ助けてよ」 「あんたが!!!助けて見せなさいよ!!!この世界を壊しなさいよ!!!!」 「マザーなんかの作ったシステムをほんとに壊せるっていうの?!?!そんなことできるわけないでしょ、この世界がどれだけ続いてると思ってるの?!!?」 「ふざけないで」 「あたしに、希望を渡さないで」 「…」 「たすけてよ」 「あたしはずっと後悔している」
ちがう
たすけて
助けてって叫んで見せても、ケロッとそれが正しいみたいな顔で笑っていたファーネイの顔をずっと見ていた。
誰かの笑顔が怖いような気がしている。
誰かの笑顔を見なければいけない気がしている。
しかし何したったかにしたって笑ってなきゃやってられない。
狂ったフリしてなきゃやってられねえや。
本当は、扉の外に助けを求めていて、
信頼できる人に助けてもらいたくて、
頭が痛い。
「できる。大丈夫」
「…やり遂げるからよ、必ず」
「
──世界に何百年と君臨している。
もう少し短いか。
しかして、もう星と密になったそれは。
ひっくり返すには、規模がデカすぎた。
──これ。
この言葉。
顔合わせして、半年経ったくらいの時に。
つい漏らしたこと。
笑って、うんって答えないでよ。
君たちの裏切り者だ、あたしは。
──彼女の話はこれで終わり。
残っているのは。
残り物の、話がひとつ。