RECORD

Eno.8 スフェーンの記録

Record:スフェーン:6


「俺はお利口さんな方だったと思う」



見送る日には寂しさを殺しながら笑顔で見送って。
それが仲良い人の日だったら、こっそりベットの中で泣いていた。
出演者に選ばれた人とは二度と会えないことを知っている。
この居住区の当たり前だった。
配られた端末でも、その人たちの行方は追えないから。

俺はお利口さんだったから、それ以上は調べなかった。
成績は平凡。運動能力もあんまり高くない。
ただ、足だけはやたらと早くて、みんなの中での一等賞だった。


「それが自慢だった」



全速力で走ってるその時は、周りに何も見えないから、何も聞こえないから好きだ。
誰よりも風のようにかけて行って、運動測定のたびに優秀だと褒められて。
居住区の中の子供達と遊ぶ時、鬼ごっこをすると嫌がられる。
鬼にしても逃げ役にしても。
でも逃げ役にされるのが特に嫌がられた。
見つけるのは下手だから、鬼ばかりやらされて。
まるで隠れ鬼みたい。

その下手さが、逆に俺は良かったらしい。
人をよくみて、辺りをよく見るようになった。
よぉく片目をこらせば、みつかった。
あとは早く走って捕まえるだけ。

そのうち、鬼ごっこは不平が出たから、キッパリやめるか俺抜きになった。


「文句はなし」




是非もなし。
それは正しいからそっかで終わる話だった。
不平が出るなら、やらない。

本当は反抗したかったけど。
悔しいじゃないか。それで自分の好きなことができないの。

でも喧嘩なんかしたら、マザーにとても怒られるから。



「あとは、頑丈だった」



星の声に負けない。
星の声を聞いても、言葉に置き換えることを、軽い苦痛とたまに紡いでいた。
何度も、何度も。腹立たしいほどに何も帰ってこなかったけど。
聞くたび、嘔吐する人がいて。
聞くたび、不明瞭な言葉を話し出す人がいて。
聞くたび、苦しむ人がいた。

それに対してマザーは、仕方のないことです、と前置きをして。


「君たちをより良く育てるための栄養ですから』



それだけだった。
マザーはいつも正しい。俺はそれを守っていた。
怒られないように、正しくあれるように、害でないように。
優しく、清く、誠実に。


「……」




「正義感と、頑張りたいと言う気持ちは、誰よりも強かったから」




だから、かわいがっている妹分の涙が、当然ほっとけなかった。