RECORD

Eno.276 リベレの記録

薄翅:偏見

「……で、話を聞いてほしいんだね」


「はい……」


「ではこのエフェメラさんが
 小説のネタにしたいという下心を捨てて
 友達のリベレのために全身全霊で拝聴するよ」



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リベレ
女っぽく見られたくないというだけの理由で
自分の性別に駄々をこねて18年経った少女。



エフェメラ
速い乗り物とか熱血展開とか変形合体とか
男が好きなものが好きすぎるだけの少女。



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「友達に自分が女であることを言えていなくて……。
 多分ずっと男性だと思われているだけに、
 騙しているような気がして心苦しいんです」


「ふむふむ。まず整理しよっか。
 リベレは女の子だけど……男の子に見られたいんだよね?」


「本当に男性になりたい、
 というほどのものではありませんけどね。
 身体も中性的なアバターのもので、女性であることを
 知っているのはバイト先だけです」


「自分の性別を伝えたいという気持ちがある?」


「とても仲良くさせてもらっているので。
 嘘をついているような今の状態は、
 あまり好ましくないのではないかと」


「……でも、言うのが怖いんだね」


「そりゃ、そうですよ。今までの関係を壊してしまうかも。
 僕は異性間の友情を信じていますけど、
 相手が委縮してしまうかもしてませんし」


「それに……、僕個人の心苦しさのために、
 相手にとっては知らなくてもいいことを伝えるなんて。
 ちょっと身勝手とも思いませんか」


「リベレは……友情のことナメてるでしょ」


「最近店長に似てきました?」


「秘密を共有することは、
 お互いの友情を深める大事なステップだよ。
 私とリベレがそうしたように」


「大丈夫だって! リベレの大事な友達なんだから、
 リベレがどんな子でも受け入れてくれるのは
 わかってることじゃない」


「それは、そうでしょうけど……」


「……ゆっくり考えてからで、いいことではあるよ」


「でもいい機会かもしれないよ。未来のことを考える」


「私たちは最初から、リベレが女の子だって知ってたから……
 お友達に話すことが、リベレにとって一番、考えを整理できるかも」


「一度、時間を取ってもらってもいいんじゃないかな。
 私が友達だったら、喜んで話聞くよ。今みたいに」


「……大丈夫だよ!」



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「……本当はわかってるんです、
 優しい友達だから、ちゃんと受け入れてくれるし、
 何も変わらないままでいさせてくれることも」


「僕が恐れてるのは、
 これからを“決めなければいけない”ことだ……」